壁新聞

【『まちポレ壁新聞 -電子版-』更新しました。】Vol.101

◆4階へ降りる踊り場に、「TOKYOタクシー」の手ぬぐいをパネルに入れて掲示しています。これは、今回の紙面で取りあげた宣伝キャラバンの販促グッズでした。当初はあくまでも「お土産」だったのですが、反響が大きかったので館内ディスプレイがオーケーになったのです。ま、私自身問い合わせた一人ですが(笑)。

そんなわけで今回は、11/21からの「TOKYOタクシー」公開に合わせ、2回前の170号を紹介します。公開前のため作品の内容には触れていませんので安心してお読みくださいませ。

 

◆『まちポレ壁新聞』最新172号『夢の世界へのいざない』(11/17発行)は、5階ロビーに掲示中です。

※151号以降のバックナンバーのファイルもあります。

まちポレ壁新聞 №170  2025年10月24日

生きとし生けるもの

駅前純情シネマ その64

正月興行を間近に控えた10月は、映画会社各社の宣伝キャラバンが続きます。何社もあるので分担して、私は松竹の宣伝会議に出席しました。

以前は会議室や式場などで行っていたキャラバンですが、最近はシネコンの1スクリーンや試写室でやることがほとんどです。

今回も映画館には違いないのですが、東劇というのに胸が躍りました。シネコンが登場する前、ブロックブッキング時代にチェーンマスターだった劇場です。銀座のロードショー館に行くこと自体が少なったから記憶が定かではないのですが、主に松竹東急系の2番手の作品を上映して、アクション映画が多かったイメージがあります。

今回、40年来の夢が叶っての初見参となりました。

 

有楽町駅で降りてまず、「あった」と過去形になってしまった丸の内東映をカメラに収め、路地を覗いては、自分にとっては映画の学校だった並木座はどの通りだったっけ?と記憶を蘇らせつつ、その先のシネスイッチ銀座は「ぶぶ漬けどうどす」で伺ったばかりなので端折って、歩を先に進めます。

続いて、おのぼりさんとしては必須の歌舞伎座でパシャっと一枚。たむろする群衆は、外国人が圧倒的に多く見受けます。東銀座に差し掛かった時、そういえば銀座シネパトス1~3という今でいうミニシアターがあり、入ったことはなかったけれど相当マニアックな映画を上映していたななどと思い返しながら、会場である東劇に到着。

 

入ってすぐ安堵感に包まれました。そこが「映画館」だったからです。何を当たり前なことをと思うかもしれませんが、シネコンではなく、絶滅危惧種に当たる昭和の香りが残る、単独で存在する映画館だからです。今のシネコンから消えてしまったスクリーンカーテン、袖幕、フィルム映写の名残りで二つある映写窓(それ以外に投光器用の窓も)、開映ブザー、BGMを備え、カンペキです。トイレに段差があるのまで昭和のまま。

 

流れていたBGMまでもが昭和のムード歌謡ぽく、私は倍賞千恵子さんの声に聞こえたのですが、一度も聞いたことがない曲です。結果的には、プレゼン前に業務試写した「TOKYOタクシー」の劇中歌で、別の方の歌唱でヒットした古い歌を倍賞さんがカバーした曲でした。プレゼン出席者は若いシネコンスタッフが多いので、おそらくこんなこと誰も気にしていないだろうなと、倍賞さんファンの友人にラインしながら聞き入っていました。

 

東京出張の際は、いつも宣伝会議の前後に映画も見ているのですが、今回は見たい映画との時間が合わずに断念。宣伝キャラバンのみで終わってしまったのが悔やまれながら、数時間の東京滞在を終え帰路へとつきました。

 

いつもの長いあとがき

 

前出「TOKYOタクシー」は、言うまでもなく「パリタクシー」の焼き直しです。山田洋次監督のコメントを読むと、どうも監督自らリメイクを希望したようです。これは、オリジナル作品の配給が同じ松竹だったということも幸いしたのかもしれません。

 

以前にも松竹富士のことを触れた際に、松竹の「血」という表現を使いましたが、それはインド映画についても言えるのかもしれません。2023年の「エンドロールのつづき」、昨年の「花嫁はどこへ?」という珠玉の作品に続いて、今年はガラリ毛色の変わった期待度大のアクション映画「KILL 超覚醒」が控えています。インド映画にどういうルートがあるのかは不明ですが、大手が手掛けてくれれば必然的にマーケットが広がりますから、今後も松竹の動向が楽しみです。

 

毎年暮れに行っている「支配人セレクト 今年絶対にスクリーンで見ておくべき映画たち」と冠をつけたアンコール特集。今年も11月下旬からの予定で、3作品リストアップしました。配給会社との交渉はこれからなので、実際に上映できるかを含めて、何が飛び出すかはお楽しみということにしておきます。

優先順位で4番手になってしまったために選から漏れた作品をあえてご紹介すると、それは「あの夏の星を見る」です。

単純に好みという点からいえば上位に値するのですが、そこは商業映画館なので興行も加味しなければならず、泣く泣く断念しました。公開時にも書いたけれど、「がんばっていきまっしょい」以来となる、東映発の佳作です。思い入れ度合いと、2作を配給した東映の母艦である丸の内東映の閉館、「がんばっていきまっしょい」を製作したアルタミラピクチャーズの破産ということを考えたら、もう一度まちポレのスクリーンに流れるヨルシカの曲を聞きたかった。

ただ、東映にはお正月、「楓」があります。個人的に思い入れの深いスピッツの名曲がベース。この曲を初めて聞いたのは四半世紀前、まだ姓が変わる前の妻の生歌(カラオケ)でしたから。このエピソードについては、割愛しますけどね。

 

電子版のアーカイブも含め、久々の発行となった壁新聞。映画鑑賞自体、この一ヶ月で「宝島」と前出「TOKYOタクシー」を必要に迫られて見たのみ。理由はこのところの壁新聞の内容と今回の見出しで慮ってください。  (沼田)