壁新聞

【『まちポレ壁新聞 -電子版-』更新しました。】Vol.47

◆イラストレーターとして数々の功績を残した和田誠さんが亡くなって4年半。国立映画アーカイブでは、暮れから『和田誠 映画の仕事』と題した回顧展を開催中です。
 映画監督の分野でもその才能を発揮しましたが、最大の功労は、比類なき映画の語り部だったことではないでしょうか? 映画の魅力を伝え、残してくれました。
 今回は、その和田さんをはじめ、映画ファンの作家たちを中心に書いた4年近く前の22号をご紹介します。当時はコロナ禍で休館中でもありました。
 尚、和田さんの回顧展は、3月24日まで開かれています。

◆『まちポレ壁新聞』最新128号『賞の権威って?』(2/29発行)は、5階ロビーに掲示中です。
 ※101号以降のバックナンバーのファイルもあります。

まちポレ壁新聞 №22  2020年6月4日

晴耕雨読の日々

タイトル未定の新しいコラム (その22)

 №20で、晴耕雨読ならぬ「雨聴」だと書きましたが、「雨読」も少々。

 まず、「田村はまだか」(朝倉かすみ)を再読したのは、笑っちゃうような理由から。友人が見た夢の中に私が、「まだ来ない、まだ来ない」と名前のみ出てきて、結局登場せずで夢から覚めたという(笑)。あの小説の感動はどこへやら。まったくもって原作を傷つけるような形で登場してしまい(いやしてないのか)、申し訳ない(笑)。

 もう一冊は「生きいそぎの記」(藤本義一)。こちらもやはり再読。
 「映画が好きな君は素敵だ」という長部日出雄さん選出よる、作家たちの映画に関する小説やエッセイを集めたアンソロジーの中の一編。
 作家に映画好きは多いようですが、顔触れが凄いんですよ。遠藤周作、五木寛之、筒井康隆、池波正太郎、山本周五郎、小林信彦など総勢25名! 

 「生きいそぎの記」は、早世の映画監督川島雄三について書いたもの。藤本氏は、監督の遺作となった「貸間あり」に助監督として付いたそうで、その製作日記と一口で言えばそうなるのですが、その壮絶なる生き様から映画史に残る数々の作品は生み出されてきたんですね。
 初読は30年以上前でしたが、この本を当時から映画本のベストとしながらも、なぜ川島雄三作品を追っかけてこなかったのか、自分のアホさに呆れてしまいます。遅まきながらも、ビデオで追っかけるか。
 藤本氏の自著「生きいそぎの記」には、「師匠・川島雄三を語る」と題した講演が収録されているらしく、そちらも気になりますね。

 尚、本書を検索すると、おそらく「24名の作家たち」と出てくるはずです。一人多いのは、表紙のイラストを描いた和田誠さんも私は含めたからです。本の内容にふさわしい味わいのあるイラスト、見事な作品選出! 本当はそのタイトルまで記したいところですが、まだ見ぬ方の「お楽しみはこれから」のために、ルネ・クレール作品とだけ記しておきます。カバーには原題名が記されているのですが、私は未見のため、双葉さんの「ぼくの採点表Ⅰ」でチェックしました(双葉さんの批評を読んだら、本編が見たくなった)。

 上記以外では、若いころかなり影響を受けた小林信彦氏のエッセイをあっちこっちつまみ食い。「この一編だけ」のつもりが面白いから次々と読んでしまい、数冊分をトータルすると一冊分に相当したかも。
 氏の初期の代表作「唐獅子株式会社」が初めて舞台化されたときには、会場の三百人劇場にご本人も来場されていて、私はトイレで並んで連れションという、超貴重な体験もしました(笑)。

いつもの長いあとがき

 「聴く」、「読む」ときたから、最後に肝心の「観る」の方。と言ってもどこも休館中のため、当然ながらビデオでの鑑賞です。
 「河童」と「手紙」は別の場(いわきアリオスのブログ)で書いたので、ここでは省略。
 数少ないDVDのコレクションから、ヒッチコック監督の「バルカン超特急」を40年ぶりぐらいで見ました。このタイトルで思わず膝を打ったあなた、お友達になりましょう(笑)。

 ここで、話は脱線します。
 故水野晴郎氏と言えば、「水曜ロードショー」の解説者、カルトムービーの怪作「シベリア超特急」の監督が挙げられますが、もう一つ、映画配給会社インターナショナル・プロモーションの設立者でもあります(今はない)。
 ヨーロッパを中心として、旧作のリバイバルや未公開作品の発掘を行い、私が生涯のベストワンと決めている「第三の男」に出会えたのもこの会社のおかげだし、「或る夜の出来事」「赤い靴」、イギリス時代の最後からアメリカへ渡った初期の一連のヒッチコック作品の紹介など、受けた恩恵は計り知れません。

 閑話休題。「引き込み線」(意味あり)から戻してと。70年代後半、イギリス時代の「バルカン超特急」「第3逃亡者」、アメリカへ渡っての「海外特派員」「逃走迷路」が続けざまに公開され、私は「第3逃亡者」のみ未見なのですが、「海外特派員」をベストテンにも選んだほど。ところが今回、「バルカン超特急」のケタ外れの面白さに愕然としたのです。当時私はどこを見てたんでしょう?  ヒッチコックの原点ここにあり、てなもんです。それで続けて「三十九夜」(これは初見)も見てしまいました。

 小林信彦氏のエッセイを読み直したのも、もちろんこれらのこともあります。なんせ「ヒッチコック・マガジン」の編集人だったわけですから。

 最近事後に知ったことですが、天心記念五浦美術館で「海外特派員」の上映が行われていたんですね。各地の美術館で「ミュージアムシアター」と題した上映会が開かれ、滅多に見る機会のない作品の上映が行われたりしますが、これはよほどアンテナを張り巡らせていないと見逃すことがほとんど。特に前出の作品の場合は二日後に知ったので、悔しいったらありゃしない。その前月は「カルメン故郷に帰る」だったそうだし(注/実際に上映会が行われたのかは不明。休館していた可能性はあります)。                          (沼田)