◆いつの間にか150号を過ぎていました。そこで今回は、4回目だかの、ほぼ最新号の区切りとなる150号を取りあげます。要らないサービスを、この後もハイピッチで発行し続けています(笑)。
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まちポレ壁新聞 №150 2025年3月10日
イントロ
駅前純情シネマ その44
パターン①。到来物のカステラを前にして、「底のザラメが甘過ぎ」だの「下敷きの紙を嚙んじゃった時の触感が」と子供じみたたわいもない会話。極めつけは「底の紙にくっついたのを食べるのが子供の特権だった」と私。
そこから、そういえば向田邦子さんにも「海苔巻きの端っこ」というエッセイの名編があったなぁということを枕に書き出してみようか…。そう目論んでお土産でなく、あえて「到来物」という向田さんのエッセイによく出てくるような表現で書き出してみたのだけれど、あとが続かず頓挫。
パターン②。ミリオンヒット歌謡史的なテレビ番組を見ていた妻が、「YAH YAH YAH」でASKAのコートは何でなびいているの?どこから風が吹いているの?という至極真っ当な疑問を口にするのに及んでは、「インド映画は、室内だってヒーローには風が吹くんだよ」と、これまたまぜっ返す私。
よし、今回はこちらを枕に始めてみることにしよう。
前回の「インド印映画まつり」の上映作品を「カルキ2898-AD」「ジガルタンダ・ダブルX」に決めたときに浮かんだテーマ、それが「インド‼ インド‼ インド‼」でした。たった2作品で特集とは言い難いのですが、足した長さは3本分あるからね(笑)。冗談はともかく、単独の濃密度、それが掛け合わさったときにはまさしく倍になるので、これ以外は思い浮かびませんでした。見た方なら納得していただけると思います。
インド映画界隈では、「インドは突然来る」という言い回しがよく使われます。スターの来日が顕著な例。ほんの数日前に決まり→舞台挨拶の先売り開始→瞬殺で完売という流れ。新作の公開も突然なのです。
驚いたのは、「RRR」の制作秘話とでもいうべきドキュメンタリー「RRRビハインド&ビヨンド」が、4月11日から公開されるというニュースです。
そのポスターデザインがまたスゴイ‼ フィルムの山の上に置かれた椅子に、創造神ラージャマウリ監督が俯きかげんの思案顔で鎮座するというもの。主役の二人に至っては、下部に三葉の写真があるのみです。残念ながら今のところまちポレでの公開予定はないのですが、「春まつりにやれば‼」という声が聞こえてきそうですね(笑)。ま、こちらも<突然>来る、かな?かな⁉
「RRR」から「侍タイムスリッパー」へ受け継がれてきた<熱い思いの映画>の系譜は、今また「トワイライト・ウォリアーズ」へと継承されていますが、そのたぎる熱情から浮かんだのは、健さんと池部良さんのシルエットです。「RRR」の時も書いたけれど、ラストは、単身殴り込みに行く健さんに、番傘を差し出す池部良さんという構図そのものです。女性を虜にしているところだけが任侠ものと決定的に違っているけれど。この映画を広めてくれたのは、まさしくファンの熱量。みんなに教えてくれてありがとう‼と言いたいです。
いつもの長いあとがき
「トワイライト・ウォリアーズ」の序盤、九龍城の全景(セットだそうです)が映し出されますが、その時私の脳裏をよぎったのは「エイリアン3」(1992年)の悪夢でした。あの作品でデビューしたデビッド・フィンチャー監督は才気を感じさせてくれたものの、建物の構造がはっきりせず、そのためにサスペンスは半減していました。
本作も巨大な九龍城が捉えられたときにその不安を感じたのですが、そう言った説明は省いて、逆にその狭さ・猥雑さを逆手に取り、すさまじいスピード感で描きます。おそらくこれは、アクション監督谷垣健治氏の功績なのでしょうね。そういったことを知りたくてパンフレットを買い求めようとしましたが、クリアファイル付きで1,300円もするのですよ。私はグッズなしのパンフレットだけで充分なので、900円だったら買ってたのに。
この作品でも、風は重要な役割を果たしていて、小道具にも生かされています。やはりヒーローには風が不可欠なのだ‼ 「用心棒」(1961年)の桑畑三十郎だってそうじゃないか。
それにしても「ダイ・ハード」を超えるダイハードなキャラクターの面々は魅力的で、おそらく続編でまた会えるんじゃないかな?と、勝手な希望的観測。
見終えたら場内で常連のご婦人から声を掛けられました。曰く「1980年でしょう(設定が)。私、前年に香港行ってたのよ」。懐かしかったようです。
沼田映画史での1980年は、127号「賞の権威って?」(電子版70号参照されたし)で触れたように、最も映画を見ていた年でした。重複になるので洋画は避けますが、邦画では、初代「将軍」、百恵ちゃんの引退作「古都」、「影武者」、そして私の友人が挙げてくれた西田敏行さん声の代表作「がんばれ‼タブチくん‼」シリーズ、銀座並木座で見た「純」などがあった年です。
しかし、検索して分かった重要なことは、ジャッキー・チェン「クレージーモンキー笑拳」、サモ・ハン・キンポ―&ユン・ピョウ「モンキー・フィスト猿拳」が公開されていたこと。ジャッキー、サモ・ハンらにとって共に代表作とは言い難い作品でありますが、これらの前年あたりから香港映画が日本を席巻しており、こういった作品でも公開されていたということが着目すべき点です。それから45年も経って、自分のところのスクリーンで主演格のサモ・ハン新作にめぐり会えるとは、別の意味で胸が熱くなりました。 (沼田)