◆最新の157号では、『映画音楽の革命児』というタイトルでハンス・ジマーについて特集したドキュメンタリー番組に触れましたが、3年前にもハンス・ジマーの代表作の一つと信じて疑わない「クリムゾン・タイド」について、潜水艦繋がりでチラッとしたためていました。その74号を取りあげます。
◆『まちポレ壁新聞』最新157号『正しいゴールデンウィーク』(4/29発行)は、5階ロビーに掲示中です。
※131号以降のバックナンバーのファイルもあります。
まちポレ壁新聞 №74 2022年6月1日
顔の見える映画館、対面販売。
Time My-Scene ~時には昔の話を~ (vol.39)
ふと、自分の映画館での仕事を振り返ってみる。
個人館に始まって⇒市内3箇所に分かれたチェーン館⇒独立系個人館傘下⇒ビル内にまとまってのシネコン⇒ミニシアター⇒モールのシネコン、そして再びミニシアターの現在。ひと言でいうとこんな流れになります。
そして、シネコンと単館系の違いは、乱暴に言ってしまえば、エンターテインメントとアート。
まちポレに戻って約半年が過ぎましたが、誰彼となく、私はよく声をお掛けします。もちろん常連さんの割合が多いということがあります。名前を知らない方がほとんどですが、このお客様は先日これを見たというのは覚えています。定食屋さんで言えば「いつもの」という注文で通じる感覚に近いものですね。
先日も「潜水艦クルスクの生存者たち」の時、見終わって出てきた常連さんに(皆勤賞というぐらい見ていただいてます)「どうでした、潜水艦ものは一般的に面白いと言いますが?」と話を向けると、「密室だからね。昔、ロバート・ミッチャムのあったろ?」→「『眼下の敵』ですね」→「あと、ショーン・コネリーの何だっけ?」→「『レッド・オクトーバーを追え!』」→「ドイツのもあったなぁ」→「『U・ボート』ですね」といった具合で、束の間映画談義。説明なしでも通じるというのが楽しい。幸い?まちポレはマンツーマンで対応できるぐらいの来客というのも好都合(と言っていいのか?)。
逆に、別の常連さんからは「コレ、どこの映画?」と尋ねられ、「ハリウッドではなかったはず、ヨーロッパのどこだったか…」と二人してポスターに見入っていると、「あ、ルクセンブルクって書いてあります。でも、ルクセンブルクってどこ?というハナシですね」と苦笑。映画が始まってから、ネットで調べましたよ。映画は地理の勉強にもなる総合芸術(笑)。
先ほど、ミニシアターはアート系と記しましたが、別に私は娯楽映画を否定しているわけではありません。何度も書いている「新幹線大爆破」や「ダイ・ハード」は、その年のベストワンクラスの作品だと思っています。
そして、映画の魅力・面白さは形のないところ、でもその「形のないもの」が、人によっていかようにも変化するから魅かれるのだと思います。
小名浜では、「トップガン/マーヴェリック」初週の月曜日に、「やっと見られる」と声を掛けられました。「まだ、始まったばかりですよ」と言うと、「いや、2年間待たされたから」という返しが。なるほど、そーゆーことか。封切で前作を見て熱狂した世代からすると、そういう感覚なんですね。洋画としては久々のヒットで、しかも字幕版が人気。改めてトム・クルーズは大スターなんだなというのを実感した次第です。
いつもの長いあとがき
待たされたと言えば、どの作品か忘れましたが、チラシ裏面の〇月〇日ロードショーという日付部分にQRコードが印字されているのを目にしました。コロナ禍により度重なる延期が続いた故の、苦肉の策なんですね。延期になると新たに宣材を刷り直さなければならず、宣伝費がかさみますからね。
ディズニーは、不測の事態に備えてなのか、ムビチケを出さなくなりました。前売券を購入して、封切日を心待ちにするというのも楽しみのひとつなのに。旅行にしても、計画を立てている段階が一番楽しいのと同じ。
ずっと自分の中で解明されていない疑問のひとつに、どの作品からポスターに公開日が組み込まれるようになったのか?というのがあります。
バクゼンと「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズのどれかじゃなかったかとは思っているのですが、ウラは取れていません。友人が映画の新聞広告史を調べているので、それに期待しよう! これはとんでもない暴挙(=快挙)です。好きでやってるから、本人はそう思ってないだろうけど(笑)。
先日、新聞社から公開予定の有無についての問合せがありました。「いのう」というタイトルだというのです。電話を代わる前に「いのう 映画」で検索すると「伊野尾慧 Hey!Say!JUMP」が出てきて、明らかにこれは違うだろうから、「いのう→伊能忠敬→『大河への道』?」も思い浮かべながら電話を代わり、「タイトルをもう一度お願いします」と言うと、「犬王」(笑)。なぁーんだ。久々にネタになるようなやり取りで、一日中楽しく過ごせました(笑)。
いつも家で書いてる壁新聞。執筆中のBGMで出番が多いのは「クリムゾン・タイド」。潜水艦ものですね。サントラもあるのですが、ビデオを流すことが多いです。1h55の上映時間のうち、サントラ収録が60分。ハンス・ジマーの名スコアが全編を彩ってくれるのですが、初見から27年を経て初めて、ある曲がかすかに流れていることに気付きました。シューベルトの「ピアノ三重奏曲第2番変ホ長調 作品100」です。
ジーン・ハックマン扮する艦長が、デンゼル・ワシントンの副長を伴い自室に入り、愛犬(ジム・キャリーの「マスク」にも登場したマイロです、多分)をナデナデしながら講釈をたれる場面。時間にしてわずか40秒ぐらいで、しかもかなり控えめです。クラシックに疎い私がこの曲を知っているのは、キューブリック監督の「バリー・リンドン」で使われたからです。ヘンデルの「サラバンド」を荘厳な葬送曲のようにアレンジしたメインテーマが有名ですが、こちらも「一家に一枚」クラスのセンス溢れる名盤です。 (沼田)