◆アーカイブもとうとうここ(号数)まで来たか…。
およそ一ヶ月空いた壁新聞ですが、最新号では松竹映画に端を発して→松竹系の劇場→今は亡き松竹富士の「血」という並びで構成しました。となると、今回は必然的にその「血」に触れた165号を取りあげなくてはなりません。つい二ヶ月に前に書いたものですが、間が空いた分、随分前のような気さえします。
◆『まちポレ壁新聞』最新170号『生きとし生けるもの』(10/24発行)は、5階ロビーに掲示中です。
※141号以降のバックナンバーのファイルもあります。
まちポレ壁新聞 №165 2025年8月7日
生業
駅前純情シネマ その59
以前ほどではなくなりましたが、映画館で働いていると好きなだけ映画が見られていいねと言われることがあります。しかしながら、単に映画(作品)の「そば」にいるというだけであって、場内の扉の向こう側とは大きな隔たりがあります。実際に映画を通してみるとなったら、営業終了後か休みの日しかありません。休日はともかく、仕事の後に見るというのは、体調を考えたら結構きついものがあります。もちろんトークの進行前など、必要に迫られて勤務中に見るということもありますが、それは稀です。
だったら空いた時間にチラ見ぐらいは、と思うかもしれませんが、出入り口が前方にあるまちポレの場合はそれも難しく。
ただ先日、幸か不幸かお客様のいない回があり、「アメリカッチ」のラスト10数分ぐらいを再見することが出来ました。あの感動を再び味わいながら、細かいところを再確認することができたのです。もちろん、売上的には決して喜んではいられないことですが。
上映中には場内チェックに入りますが、その目的は音も含めた映像、室温の確認、これに最近だと盗撮を含めた鑑賞マナーのチェックも含まれます。私が最初に映画館でアルバイトをしたときは、更に喫煙防止も含まれていましたから、つくづく時代を感じます。ただ、場内に入ったときに自分の好きな場面だったりすると有難くもありました。そんな時はついつい「長居」しがちに。エヘヘ。そんな理由から、今まで映画館で一番多くの回数を見たのは「ルパン三世 カリオストロの城」(1979年12月公開)ということになります。場面によっては、それこそ50回ぐらい見ているかも。評論家でもないのに、「仕事で」映画を見られるとはなんと幸甚なことか。
評論家といえば、封切当時「カリオストロの城」は、プロたちから見向きもされませんでした。
まず大前提として、評論家の中で、アニメを映画の一ジャンルとして捉えていた方はごくごく一部のみで、映画とアニメは別のものという風潮がありました。だからハナから作品を見ていないのです。その証左として、キネマ旬報ベストテンで「カリオストロの城」に投票した評論家は、記憶だと確か一人か二人のみだったはずです。それに対して、「ぴあ」の読者が選ぶ「ぴあテン&もあテン」ではベストワンになったこともあります。宮崎アニメを最初に評価したのは映画ファンだったというわけです。どちらに先見の明があったか、今の映画界の風潮を考えたら言わずもがなで、一目瞭然です。
いつもの長いあとがき
今年の夏は念願だった「市川雷蔵映画祭」を4週8作品組んだために、8月にたくさん出ている反戦ものが「長崎 閃光の影で」しか組み込めませんでした。
「この世界の片隅に」「野火」、そして自分にとって運命的な出会いだった「ジョニーは戦場へ行った」といった往年の名作のリバイバルも今のところいわきでの上映は難しい状況です。
前出し、163号(電子版91号)でも触れた「アメリカッチ」で引き合いに出した「ライフ・イズ・ビューティフル」。こちらも全国的に8/15からリバイバル公開されますが、残念ながら今のところ予定は無しです。
今回、この映画を引っ張り出したのは、実は何年も前に<予告>しておきながら尻切れトンボになっている、今は亡き配給会社、松竹富士について書くためです。名称から分かる通り松竹傘下の会社で、「ラスト・エンペラー」「戦場のメリークリスマス」など、誰もが知るあまたの名作を送り出してきましたが、1999年に解散となってしまいました。その最後(最期)の公開作品となったのが、「シン・レッド・ライン」と「ライフ・イズ・ビューティフル」だったのです。
共に、名作の誉れ高い作品ではありますが、奇しくも今年は前者のテレンス・マリック監督のデビュー作「バッドランズ」と第2作「天国の日々」を連続公開出来たし、後者では「アメリカッチ」で一人4役という八面六臂の活躍を見せたマイケル・グールジャンからは、否が応でもロベルト・ベニーニを連想したし。
松竹富士亡き後、洋画は親会社の松竹が引き継いだわけですが、昨年の「花嫁はどこへ?」にしても、まちポレでは来月公開する「入国審査」にしても、脈々と受け継がれてきた<血>(伝統)というものを感じずいられません。あくまでも「個人の感想」ですが。
「花嫁はどこへ?」は以前にも記しましたが、「名作」です。頭に「映画史に残る」という形容を付けていいほどの。こういう作品がポッと出てくるところにインドの奥深さを感じてしまうのです。
一方の後者は、まず連想したのが「ミッドナイト・エクスプレス」(1978年)。旅行中に麻薬不法所持の疑いで逮捕されたアメリカ人青年の強烈な実話をもとにした作品。「小さな恋のメロディ」のシナリオを書き、ちびっこギャング映画「ダウンタウン物語」でデビューした御贔屓アラン・パーカー監督作品。この作品と出会って、ずっと追いかけていこうと思いましたからね。「入国審査」は「関心領域」に似た雰囲気も感じるし、公開が待ち遠しくてたまりません! (沼田)











