壁新聞

【『まちポレ壁新聞 -電子版-』更新しました。】 Vol.2

◆ずっとしたためてきた壁新聞ですが、その時に書きたいことだけを書いてきたので、タイムリー性というものは全く意識してきませんでした。
ただ、「モリコーネ 映画が恋した音楽家」を見てしまった以上は、そうも言っていられません。この映画を一人でも多くの方に見ていただくのが、映画館で働くものの使命と考えます。
そこで、3年前に書いた古い原稿を急遽引っ張り出すことにしました。
「モリコーネ」が2週間の限定公開のため、短いスパンでの更新となりました。前号の繰り返しになりますが、見ないと人生の損失と言える作品です。

まちポレ壁新聞 №20   2020年5月20日

タイトル未定の新しいコラム (その20)

モリコーネと、レコードと。

休業要請により、自宅と実家で過ごす時間が多くなった。週4自宅、残り3日が実家といった具合。こちらはともかく、実家では晴耕雨読ならぬ「晴耕雨聴」の日々。ただ、あちらには音源がカセットテープしかないという浦島太郎状態のため、片付けがてら、久しぶりにレコードプレイヤーをコンポに繋ぎ直してみました。

ターンテーブルが回り、カシャッという音とともにアームが上がって動き出す。レコード盤に針が下りた時のノイズに体がじわっと熱くなり……。

前後してしまいましたが、最初にどれを掛けようか《葛藤》がありました(笑)。

が、やはり「砂の器」(1974年)をおいて他にありません。作品ついてはおよそ一年前、№9で書いたので割愛。ただ友人たちに、ターンテーブルが回って再生する、30秒ぐらいの動画をラインしまくったことだけご報告(笑)。

最前の葛藤の元となった《原因》が、「ミッション」(1986年)のサントラです。

職人エンニオ・モリコーネの面目躍如たる名盤中の名盤。

作品自体はカンヌグランプリに?ではありますが、メインテーマ的な「ガブリエルのオーボエ」はこのところテレビでもよく取り上げられたので、かなりの方が耳にしているはずです。

そう、コロナのニュースで、イタリアの病院の屋上から、日本人女性ヴァイオリニスト横山令奈さんが演奏した映像。ご覧になった方も多いはず。

長い黒髪に真赤な衣装、360度パンするカメラ、そして眼下にとらえる野営テント。暮れなずむ夕暮れ時に屋上から流れる哀切な調べに、視聴者は荘厳ささえ感じたのではないでしょうか。

映像で目にしたのはこの曲のみでしたが、「シンドラーのリスト」など数曲演奏したらしく、そちらも視聴してみたかったですね。

私は一連のマカロニウエスタンは、イーストウッドやジュリアーノ・ジェンマ、フランコ・ネロなどの作品をテレビで見た程度で(当然、山田康雄さんや野沢那智さんらによる吹き替え版)詳しくなく、よってモリコーネのヨーロッパ時代の作品は知らなかったり未見が多いのですが、一年ぐらい前だったか中古屋さんで、「コンピレーション エンニオ・モリコーネ/フィルム・ミュージック66~87」という二枚組CDをワンコインで見つけ、嬉々として購入。

アルバムには、「続・夕陽のガンマン」「シシリアン」や「ウエスタン」、そして「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」までの代表作が網羅され、もちろん「ミッション」からも数曲収められています。

ただ残念なのは、解説の稚拙さ。「ミッション」に至っては、未聴のまま資料を見て書いたとしか思えない! まぁアルバム自体は素晴らしいので、自分で調べるしかないか。

いつもの長いあとがき

レコード=「古いアルバム」なので、もう20年ぐらい聴いてないものがたくさんあり、試聴中はライナーノーツに目をやり、お店のレコード棚を漁っていたころの動作よろしく、ジャケットを上げ下げしてめくっては「次は何をかけよう?」などと思いを巡らせていると、あっという間に片面の20分は過ぎ去り……。便利な時代に慣れてしまったからこそ、逆にこの手間、面倒臭さが愛おしい大切な時間に思える(笑)。

「ジャケ買い」なんて言葉もCDになって消えてしまったし、ましてや配信だとそのジャケットさえカンケーないか。

書いてるうちに思い出したけど、LPを買うと特典が付いて、だいたいポスターでしたが、「シカゴ17」のときはジャケットサイズの厚紙ポスターが、センチメンタル・シティ・ロマンスの「relax」に至っては、ジャケットケースそのものがもう一枚付いて、随分とオタク心をくすぐられたものです(笑)。

ジャケットは、単独でも立派なアートだし、確か専門の美術館もあったような……。個人的には部屋にディスプレイしたいぐらいですが、妻には邪険に扱われそう(笑)。

私は基本、レコードからCDへの買い直しはしないたちですが、唯一両方所有しているのが「ローズ」(1979年)サントラです。

特別な映画、特別なサントラ、特別なアーティスト(ベット・ミドラー)。やっぱり、《アメリカが生んだ最後のシンガー》です。

何かにつけ車中でかけてるけど、つい最近「あれ?」と思いLPと比べてみたら、裏ジャケットが違う! 色もCD(輸入盤)の方がセピアがかっている。この辺は、セールスを考慮してなのでしょうか?

映画「ローズ」は日本では全くヒットせず、同じフォックスが抱えていた彼女のステージのライブ映画「ディヴァイン・マッドネス」(1980年)はお蔵入りに。

ただ私は、当時渋谷の輸入レコード店で見る機会を得ました。字幕のない原音、テレビモニターではありましたが、「分からないけど凄かった」という貴重な体験でした。もちろん、アルバムも購入。当たり前ですが、ベット・ミドラーを聴くなら、こちらの方が堪能できます。

興に乗ってEPも聴こうとしたのですが、残念なことにドーナツ盤の穴のパーツ(名称は何?)が無くて断念。ありそうな友人に声かけてみたら、「一つしかありません」という返事。一見何気ない返しと思いきや、いま、ドーナツ盤を聴ける環境があること自体フツーじゃない!(笑)。      (沼田)