◆知る人ぞ知る、知らない人は存在すら全く知らない(笑)「まちポレ壁新聞」。アナログにこだわってきましたが、通巻が100号を超えたのをいい機会として(現在101号)、そっくりそのままの【電子版】としてホームページ上でも、不定期でお届けすることになりました。
初回は、1月27日発行の98号から。
『人生の損失』という大仰な見出しを付けた意味は、読めば分かるハズ⁉
Time My-Scene ~時には昔の話を~ (vol.63)
『人生の損失』
※これは、別のところに投稿した2021年6月18日付けの原稿です。各ペースが早すぎて掲載が追い付かず、仲間うちに公表しただけで終わっていました。早いハナシがボツということですね(笑)。
今回、この見出しにふさわしいことに出会ったので、そのことのみ加筆して再録することにしました。
※
先日、知人からの差し入れで、人生で初めてマテ貝なるものを食しました。見かけはカニの足に似ているけど、ホッキ貝も苦手だし、中身を見るとちょっと勇気を要します。それが食べたら食感もいいし美味いのなんの。もう一品、混ぜご飯もあったので喜んでいただきました。食膳に並ぶことがなかったという単純な理由から食す機会がなかったというだけですが、食べず嫌いはいけないゾと再認識した次第です。
これは映画にも当てはまりますよね。「何となく」の見ず嫌い。
これまで、ソレを覆してくれた映画が2本あります。
一本が「掠奪された七人の花嫁」(1954年)。ミュージカルです。
ダメでした、ミュージカル。トートツに歌いだすでしょ(笑)。現実では歌で「会話」はしないじゃないですか。例えば、『夕べどこ行ってたの? 電話も出なかったし』と聞いたのに、『♪ごめーん、映画見てて出られなかったのー』と<節>を付けて返されたって、『え、何? 普通に言って!』と言いたくなっちゃう(笑)。
この作品をどういう理由で見ようと思ったのか覚えていませんが、高校生のころテレビで見て理屈抜きに面白かったので、名画座ミラノという歌舞伎町にあった映画館に掛かると知ったときには、喜び勇んで前売券を買い求めて見に行きました。
МGМミュージカルの特集で3本あり、他に「巴里のアメリカ人」(事前に鑑賞済み)と、もう1本が思い出せないのですが、「雨に唄えば」か「踊る大紐育」あたりかな? 名画座ミラノというのは普段は1本立ての名画座で、時折拡大公開のロードショー作品が掛かるといった程度なので、この特品もマーケットは小さかったでしょうね。
これはうろ覚えなのですが、昔テレビでミュージカルを放送する際はセリフが吹替、歌のシーンになると原音だったような記憶があります。
おハナシは、武骨な山男7人兄弟が里に下りて花嫁を探すという至ってシンプルなものですが、何年ぶりかでの再見も、「娯楽映画の王道、面白い!」というのが率直な感想でした。誘ったGFも満足してました。
もう一作が、「誓いの休暇」(1959年)という旧ソビエトの映画です。
「何となくソビエトは嫌い」というイメージって、昔は多くの日本人にあったと思います。映画にしても共産圏の作品だとどうしても二の足を踏んでしまうという。
その偏見を覆してくれたのがこの映画です。やはりこれも高校生の頃テレビで見たのです。1時間半ぐらいの作品で、確か教育テレビだったからノーカットだったはずです。極めて〈普通の〉作品だったのが意外でした。
戦争での功績から、ねぎらいの数日間の休暇を与えられた若き兵士が、母に会うために故郷への帰還を許されます。しかし、その途中でいろいろなことに出くわし、せっかくの母との再会も、ほとんどとんぼ返りに近いぐらいの時間しかなく、再び戦地へと赴き、そして……という物語です。
素直に感動しました。高校生だった当時の私にとってみれば、同じころ教育テレビで放送してくれた「西部戦線異状なし」や劇場の再映で見た「禁じられた遊び」と並び称したいぐらい、忘れられない反戦映画の秀作です。
前者は幸運にもスクリーンで再会する機会を得ましたが、後者はおそらくレンタル店にも置いてないと思われるので、DVDでの鑑賞さえままならないかもしれません。やっぱり、見ず嫌いをすると損をしますね。
ところで、ロシア(ソビエト)の映画監督を4名以上挙げよと言われて答えられる方って、映画ファンでもそうはいないと思うのですが、どうでしょう? セルゲイ・エイゼンシュテイン、アンドレイ・タルコフスキー、ニキータ・ミハルコフ…ここまでは割とすんなりきますよね。それが4人目となると……。私もちょっと考えようっと。 (6/18)
加筆したあとがき
※ここから書下ろしになります。
いきなりですが、「超ド級」を全て漢字で書けますか? 私は文脈の流れから読めても、自分では使ったことがない言葉だから書けませんでした。〈弩〉と書きます。
「RRR」を見て浮かんできたのは、その「超弩級」という言葉でした。それ以外にこの作品を紹介する適切な表現が浮かんできません。この3時間を見逃すと、人生の大きな損失になるぐらいの桁外れの映画です。
〈見た嫌い〉は仕方ありませんが、見ず嫌いはホントに損です。
まちポレでの公開は3月なので、まだまだ先になります。
そこまで待つ必要はありません。とにかく、時間を作り出してすぐにでも見てください。そんな映画です。
追伸/再見は、まちポレでね。 (沼田)