壁新聞

【『まちポレ壁新聞 -電子版-』更新しました。】Vol.4

◆コロナも少し落ち着きを見せ、5年振りに「いわきサンシャインマラソン」も開催されました。
 そして、12回目となるあの日がまた巡ってきます。あの直後に当ビルのお隣り、夜明け市場に誰かが書いた『明けない夜はない』という文字が、目に焼き付いて離れません。
 私のデスクの引き出しには、「2011.3.11」と印字された「ドラえもん」の未使用チケットが眠っています。12年後のその日、それぞれの思いを込め、皆さんとまちポレで踊ります!!

まちポレ壁新聞№97 2023年1月25日

Time My-Scene ~時には昔の話を~ (vol.62)

時の流れに

 健康診断を早く終えた休日、時間が半端に余ったので同じく休みの妻を誘い、久々のドライブに出かけました。
 久之浜の海鮮丼が美味しい店へ向かうも生憎定休日で、やむなく隣接する気になっていた店でお昼を済ませ、その後は目的地を決めずに6号線を北上しました。震災後、R6に車を走らせるのは2年振り4、5回目ぐらいになりますか。除染は進み、ホテルや真新しいアパートが目立ちます。バリケードも以前よりは減りました。
 しかし。ところによってはいまだに高い線量計の数値を示す場所もあります。「たとえば、新居を建てている人は、新しく住む人の喜ぶ顔が目に浮かぶだろうけど、ここで道路工事や除染などをしている人たちは、何を思い描いて作業しているんだろうね」「そうだよね。<先>が見えないものね」
 そんな会話を妻と交わしました。
 時は止まったままです。

 間もなく、震災から丸12年を迎えます。
 奇しくもその<当日>にまちポレでは、「RRR」の無発声マサラ上映(注/執筆後、声出しOKに)を行うことにしました。たまたま最初の土曜日に設定したらその日になったというだけで深い意味は全くないのですが、正直この日にお祭り上映を行うことに躊躇いがないわけではありません。もしかしたら批判もあるかもしれません。でも、こういう日が迎えられることに感謝しつつ、その日を迎えようと思っています。
 当日のゲストにお呼びした方はお隣の茨城や千葉在住ですが、同じく感慨深いものがあるという表現をされていました。

 「RRR」は10月21日の封切でしたから、丸3ヶ月が経ちました。なのに、その熱狂ぶりは衰え知らずで、逆にヒートアップしている感さえあります。
各地で復活上映やドルビーシネマなどラージフォーマットでの上映が始まったし、マサラ上映も頻繁です。マスコミも民放のワイドショーはもちろんのこと、NHKにまで取りあげられたりしています。

 そのうえ賞レースにまで名乗りを上げて、ゴールデングローブ賞をも賑わし結果的に最優秀主題歌賞を受賞したもんだから、すわ次はアカデミー賞か!?などとまことしやかに囁かれています。これには配給会社やファンも驚いているかもしれません。確かに衝撃的な面白さだけど、これまでインド映画はゲージツとは無縁と思われていましたから。
 ファン気質とは不思議なもので、それは自分たちが〈育てた〉子供が親もとから巣立っていくのに似た、複雑な晴れがましい喜びに浸っているかもしれません。

いつもの長いあとがき

 長く興行界にいるせいで、商品的価値でしか見られなくなっていたアカデミー賞ですが、去年の「ドライブ・マイ・カー」から、いち映画ファンに戻ったような心境で、今年も結果が楽しみで仕方ありません。

 それは、「RRR」「トップガン マーヴェリック」という娯楽映画の王道2本がノミネート確実と言われて〈お祭り〉を盛り上げていることに加え、「イニシェリン島の精霊」「フェイブルマンズ」「TAR(ター)」といった作品が必ずリストアップされているからです。もちろん全てこれからの公開作品なので未見ですが、それでも過去の関連作品を見れば自然と胸が躍ってきます。
 でも、これで終わりじゃありません。まだまだあります。不朽の名作をドイツがリメイクした「西部戦線異状なし」。これはネットフリックスですが。更に、「エブ・エブ」の略称で呼ばれ、ハリウッドで最も勢いのあるA24が製作した「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」。これが大本命とも言われています。いつもの斬新な作風ではなく、コメディ調というのが意外で、しかも主演がミシェル・ヨーだヨー。どゆこと?と言いたくなります。

 ここで、いつもの脱線。ミシェル・ヨーや「RRR」の躍進ぶりを見て感じたのは、だったらどうしてジャッキー・チェンやリー・リンチェイ(ジェット・リー)は一部でしか評価されなかったの?という強い思いがあります。

 閑話休題。賞レースは日本も同じ。
 今回、自分がリクエストして組んでもらった「ケイコ目を澄ませて」「夜明けまでバス停で」が、この時期に話題に中心にいるのは非常にウレシイですね。
 前者の岸井ゆきのちゃんは、以前「中島ひろ子ちゃんを連想させる」と壁新聞に書きましたが、何と、彼女がお母さん役で出てきたのでビックリしました。ただ、三浦友和さんがリストアップされていないのはおかしいんじゃないのと抗議したいです。私は、最初の登場シーンで鳥肌立ちましたよ。
 後者が知名度のある賞で名前が挙がってこないのは、ひとえに弱小プロ製作ゆえだと思います。これは「ケイコ」と一緒に組んだ「そばかす」も同様。三浦透子さんは言うに及ばず(エンディングテーマも歌ってます!)、脇の役者さんのアンサンブルも素晴らしくて、それをまとめ上げた舞台出身の玉田真也監督の奇をてらわない演出手腕も見事です。

 共にパンフレットも充実していますが、「ケイコ」のは映画に則した作りで洒落てはいるけれど、小さすぎて広げるのが難。←重箱の隅をつつくのがこれぐらいしかない(笑)。                     (沼田)