壁新聞

【『まちポレ壁新聞 -電子版-』更新しました。】Vol.12

◆今回は、一年前の夏に書いた83号をご紹介。ちょうど前月から始めた『リニューアルオープン4周年記念企画』について記したものです。
 まちポレいわきが単館系のミニシアターとしてリニューアルオープンしたのが、2018年7月13日でした。そして、一周年記念作品として上映したのがドキュメンタリー映画「作兵衛さんと日本を掘る」、2・3年目は小名浜を見ていたため無しで、4年目の昨年が「日本映画の黄金時代 巨匠×若尾文子」。5年目となる今年は「インド印映画まつり 2023夏」として、「バーフバリ」2部作などを準備中です。何てバラエティに富んだ企画なんでしょね(良く言えばですが笑)。

まちポレ壁新聞№83   2022年8月18日

こころの居場所

Time My-Scene ~時には昔の話を~ (vol.48)

 表立って冠は付けなかったのですが、7月1日から五週間にわたって行った『日本映画の黄金時代 巨匠×若尾文子』は、まちポレいわきのリニューアルオープン4周年としての企画でした。
 当初は別の俳優の特集を予定していましたが、その方は来年大々的にリバイバルをするということで売り止め。代案として配給会社から挙がったのが若尾さんと京マチ子さん、一連の初期角川映画、「大魔神」「ガメラ」などの特撮ものでした。これらの中から若尾さんに白羽の矢が立ったのは、単純に私の好み(ということにしておきますか笑)。

 配給会社の角川映画からは、ジャンル別に100本ぐらいのリストを送って頂きましたが(大映の権利を譲り受けましたから)、その中から選ぶのは至難の業。そこで、当初から決めていた『日本映画の黄金時代』のテーマのもと、各監督一作品に絞って4本と決めました。
 ところが、ハナからオープニング作品に決めていた「越前竹人形」がどうやっても溢れてしまうのです。えーい、だったら5本まとめてやるぞという結論に至った次第です。後半になるに従い数字が上向きになったのは、浸透まで日数を要したのか、それとも小津安二郎・溝口健二というネームバリュー故なのか!?

 期間中には、「今度は○○特集やってよ」というありがたいお声も複数頂きました。もともと、『日本映画の黄金時代』というメインテーマを付けたのは、シリーズ化を想定してのものです。まちポレ版『午前10時の映画祭』を目指しますか!? 乞う御期待←往年の日本映画の予告編調。

 上を言ったらキリがありませんが、動員的にはほぼ予想通りの結果に終わりました。レギュラーの番組を縫っての企画ゆえ余裕がなく、初日前日になってトートツに浮かんだのが「皆勤賞」のプレゼント。しかし、告知が間に合わないのでどうしたものかと考え、初日の終了後に場内でアナウンスして、二日目のトークショーで告知するという慌ただしさとなってしまいました。
 賞品は5名様に招待券。まちポレにはポイントサービスがないので、せめて5本全部見ていただいた方にはなにがしかの還元という発想からです。当選の確率はかなり高いだろうと踏んでいたのですが、結果的に8名様からの応募がありました。コアなファンがこれだけいて支えてくださり、有難いことです。この数の中から抽選というのは忍びないし、もともと<還元>の意味合いでしたから、全員当選とさせていただきました。改めてお礼申し上げます。

いつもの長いあとがき

 当初は触れるつもりがなかった今回の舞台ウラを文字の残そうと思い立ったのは、先日の北九州旦過市場の火災により、小倉昭和館が全焼してしまったというニュースを目にしたからです。旦過市場のことは以前、NHKの「ドキュメント72時間」を見て知りました。そこにあったのが小倉昭和館1・2というミニシアターでした。ウチと同じような作品を掛けているので、時々ネットで番組やイベントをチェックしていました。

 今回、もらい火による惨事にもかかわらず、館主の樋口さんが丁寧にマスコミ対応にあたり、「皆さんの居場所を失くしてしまい、申し訳ありません」と話されていたのに、胸を打たれました。会社名のプレートや近所の方が見つけ出してくれた「チケット売り場」という看板を手にし、「これがあれば、また再開しようという気持ちになります」と気丈に語っていた姿が忘れられません。
映画館が<居場所>になるというのは、私の究極の目標でもあります。
 自分の失火でもないのにお詫びをしている姿勢、なるほど北九州市長もお見舞いの声をかけるわけだと感じ入りました。

 5年目のまちポレは、この後も<個>を打ち出した企画をやっていきます。今のところ年内に二つ準備中です。まだひっそりと胸の内にしまい込んでいるだけなので(笑)、発表は出来ないのですが。

 ところで、若尾さんの特集に当たっては、いわきポレポレ映画祭実行委員長に多大なるご協力を頂きました。「巨匠×」というテーマだけ指定して、作品選定はほぼお任せしたのですが、その正鵠を射た選定には唸るばかりで、このあたりの「打ち明け話」をしていただこうと、初週二日目のトークショーをお願いした次第です。当日は少ない観客の中でのトークとなってしまったのが残念でしたが、ご参加していただいた方は納得していただけたと確信しています。名よりも実を取ったということです。

 選定して頂いた鈴木委員長のことは、お客様の一人としてお顔は存じ上げていましたが、上映作品についてリクエストを頂いたのがお話をするようになったきっかけでした。順序は忘れてしまいましたが、それが「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス」と「バッド・ジーニアス/危険な天才たち」でした。前者はすでに決まっていて、ちょうど告知をし始めようとしていたところ。後者はリクエストがあったため急遽組み込みました。タイの映画ですから、リクエストがなければいわきではお目に掛かれなかった可能性大でしたね。

 その「バッド・ジーニアス」の監督の新作「プアン/友だちと呼ばせて」を9月30日から上映致します。ウォン・カーウァイが才能に惚れ込み、製作総指揮にあたったという作品、これは楽しみ。           (沼田)