壁新聞

【『まちポレ壁新聞 -電子版-』更新しました。】Vol.20

◆このところずっと黎明期の壁新聞を取りあげていましたが、少しワープして、今回は3年前の19号をお届け。今の見出しになった『駅前純情シネマ』のタイトルで、いわき民報の姉妹紙『Junction』に書いた初回をモチーフにしたためました。
 本文中の生涯学習プラザの展示は企画ものだったようで、今は撤去されています。事情は分かりませんが、惜しい気はします。
 「ゴッドファーザー」は公開直後にコロナ禍で休館となってしまったために、小名浜ではたった一日限りの上映になってしまいました。あぁぁ。

まちポレ壁新聞№19  2020年4月17日

午前十時に映画を浴びる

タイトル未定の新しいコラム (その19)

よんどころない事情で今の住居から引っ越さなければならない事態となり、少しずつではありますが、モノを整理しています。
 「あとで」と思ってそのまま放置していたものが山のごとくあり、特に《紙類》が多く、手間がかかります。

縁あって地元紙に映画のコラムも持たせてもらっていましたが、「昔話でもいい。映画から脱線してもいい」ということだったので、軽い気持ちで引き受けたら、(注/連載記事を)今回整理して自分でもビックリ! 3年半以上続いていました。
その初っぱなに取り挙げたのが、「午前十時の映画祭」でした。
カルト的な「ある日どこかで」と、この映画祭で本邦初公開となった「ブラック・サンデー」を引き合いに出し、私が《映画を浴び》るように見ていた時代の作品群に触れてほしい、と。

残念ながらいわきでの上映は実現出来ず(希望はしましたが)、この企画自体が、10年の節目をもって終焉となってしまいました。

ところが、何と言ったらいいのか今回のコロナ禍により、その中の3本だけではありますが、《拾う》ことができたのです。

「ジョーズ」は、昨年《映画史に残る映像と音楽》と銘打っての6本の特集上映でも取り挙げましたね。改めて言うまでもありませんが、《見せない》演出の巧さ、コワさ。
「愛と青春の旅だち」は、そのスピルバーグ監督の「E、T、」と同じ年の正月映画でした。レイティングがR15というのが意外。そんなキワドイシーンがあったかなぁ? こちらは前売特典(のはず。当時まだ入プレはポピュラーではなかった)にオリジナル予告編収録のソノシートが付きました。私は、現物を持ち合わせております。自慢っ。ま、誰もキョーミないでしょうが(笑)。
「ゴッドファーザー」は、いわきのオールドファンにとってはいわく付きの映画と言えるかもしれませんね。
なんでも、今のティーワンビルの地にあった「聚楽館」の開館番組で、前売券まで売っていたのに火事で焼けてしまい…、それで世界館ビルに移転したというハナシを聞きました(違っていたらスミマセン)。
 この辺の事情は、当のティーワンビル4階生涯学習プラザの展示に詳細があると思われます。なかなか足を運ぶ機会がないかもしれませんが、まさに<労作>です。いわきの映画の歴史が一望できます。蛇足ながら、弊社社長や私も掲示物に写っていますヨ(笑)。

いつもの長いあとがき
 
 新聞連載時は限られたスペースゆえ、内容についてはほとんど触れられなかった前出の二作について。

 「ある日どこかで」は、当時の選定委員のおすぎ氏のセレクトだろうと思うのですが、いい意味で時代錯誤的なクラシカルの雰囲気が漂う、甘美なラブストーリー。そこにタイムスリップという味付けが施されています。主演が「スーパーマン」のクリストファー・リーブ。現代的な端正な顔立ちだけど、その味付けによって違和感は消えましたね。そして相手役がジェーン・シーモア。こちらは中世の衣装がジャストフィット。彼女の可憐な美貌と、二人の愛を奏でるジョン・バリーの甘美な音楽が全てと言っていいぐらいです。必見とまでは言いませんが、なかなかお目にかかれない類いの作品であることは確かですよ。
そういえばこの作品のヤノット・シュワルツ監督の前作は、「ジョーズ2」でした。私はどうも、「燃える昆虫軍団」=B級アクションの監督というイメージから、見たかどうかさえ覚えていません。

 「ブラック・サンデー」は、いわきのみならず、全国の映画ファンにとっていわく付きの作品でした。
 というのも、封切直前に、上映に反対する輩が劇場に爆弾を仕掛けたというテロ行為があり、公開を中止せざるを得なくなってしまったからです。確か、夏の有楽座あたりの空母クラスの劇場に組まれていて、興行的にも質的にも目玉でした。
 選者は(委員に名を連ねていたとすれば)おそらく正統派の品田雄吉さんあたりかな。
 私はスーパーの中古ビデオセールで、これを見つけました。20インチぐらいのテレビ画面でもオソロシイぐらいの緊迫感とド迫力に、度肝を抜かれました。
 ジョン・フランケンハイマー監督作品はほとんど見ていないのですが、私はなぜかポパイ刑事よりも、バート・ランカスターの面構えが浮かんできます。それは単に「五月の七日間」からではなく、《大作感》とでもいえばいいのか。ま、チャールストン・ヘストンやデ・ニーロに繋がる系譜ですね。
 この作品は、是非とも大スクリーンの音のいい劇場で再見したいものです。

 「午前十時の映画祭」は、めでたいことに来年からの再開も決まったようですね。興行は大事ですが、「何度見ても凄い」という当初の意に沿った、質の面でのバランスも考慮した選定を願います。           (沼田)