壁新聞

【『まちポレ壁新聞 -電子版-』更新しました。】Vol.68

◆11/29からスタートした『まちポレいわき支配人セレクト「2024年絶対にスクリーンで見ておくべき映画」アンコール‼』特集。今年で何回目になるのか忘れましたが、それらの企画上映に触れた、2年前の91号をご紹介します。今回選んだ4本にはそれぞれの理由があるのですが、それについてはまたの機会ということに。

 

◆『まちポレ壁新聞』最新140号『暗闇での共有』(11/23発行)は、5階ロビーに掲示中です。

※121号以降のバックナンバーのファイルもあります。

まちポレ壁新聞№91  2022年11月1日

太陽と月

Time My-Scene ~時には昔の話を~ (vol.56)

 

黒澤明監督がサタジット・レイ監督作品を称して、『サタジット・レイの映画を見たことがないのは、太陽と月を見たことがないのに等しい』といった旨のことを述べていたそうです。

ちょっと突き刺さりました。見たことないです。世代的に「チェスをする人」「遠い雷鳴」「チャルラータ」の日本公開がかろうじてクロスするかしないかなので。もちろん、他の作品も含め名画座などに掛かることはあったから、積極的に見ようとしていなかったとも言えます。今なら別だけど、10代の私にはあまりにもハードルが高そうに思えたので。

 

見ないで言うのもなんですが、インド映画にはこういうアート系作品もあるのです。娯楽と芸術が見事に混在している映画王国です。

 

2年のブランクを経て戻ってきたまちポレの単館系のラインナップにも馴染んできて、私自身にとっては逆にこの期間が、いい充電期間となったようです。

後半にやろうとしていた三つの企画もなんとかクリア出来そうです。

それが『日本映画の黄金時代』『インド印映画まつり』『アンコール!絶対にスクリーンで見ておくべき映画』の三つです。

共通しているのは、シリーズ化を想定していること。但し、そのためにはある程度の実績が伴わなければなりません。既に結果の出ている『巨匠×若尾文子』に関して言えば、及第点と言えるのかもしれません。同じく5週間上映したウォン・カーワァイ特集とほぼ同じぐらいの集客でしたから。

 

インド特集については前号で書いたので、ここではアンコール特集について。

これは、以前やっていた『○年を代表する映画』特集の〈拡張版〉と言えます。ただ、これまでは成績や評判という言わば〈他人の評価〉のすぐれた作品を取りあげましたが、今回は、自分自身が見て気に入った作品からリストアップしました。それで、ズバリ『まちポレ支配人セレクト』と大上段に構えたわけです。一つ注釈を加えるとすれば、「上半期に公開した中で質量ともに充実」していた作品の中からということです。これは商業映画館という立場上、ある程度はやむをえません。少し期間が空いていて、尚かつ興行的(量)にも成績の良かった作品という括りからの選出です。

まさに衝撃的だった「さがす」、普通でない世界を「普通」に描いた「コーダあいのうた」の脚本の素晴らしさ、映画的快楽に満ち溢れた「偶然と想像」。嗜好は人それぞれなので、好みの押し売りをするつもりはありませんが、とりあえずはご覧になった上で、あーだCoda言ってほしいと思います(笑)。

いつもの長いあとがき

 

私の古い友人が若い頃、映画館の論文コンクールに応募して見事入選したのですが、その書き出しは「映画館で映画を見るというのは、なんて不健康なことだろう」というものでした。逆説的でインパクトのある見事なイントロですよね。これだけでグッと引き込まれます。

言われてみれば確かに、快晴の空の下、車を走らせ紅葉狩りにでも出かけた方がよっぽど健康的と言えます。それでも暗闇に身を潜め、映像に身を委ねる快楽は、いったいどこから来るのでしょう?

 

たとえば、真昼間から「さがす」を見る前の憂鬱(笑)。ところが終映後に場内を後にするときの充足感。このギャップが堪らない。

故野村克也監督が現役時代、「ОNがひまわりなら、私は月見草」と語ったそうですが、映画の魅力もその例えと似ているかもしれません。

 

先月久しぶりの映画館へ出向いた妻たちは、半月後には再び小名浜の暗闇を訪れました。ママ友の一人がずうーっと見たい見たいと騒いでいた「耳をすませば」を見るためです。この時も残りのスペースを埋め尽くすようなネタを提供してくれたのですが、毎回他人の褌ばかりで枡目を埋めるわけにはいかないので、割愛します(笑)。ただ、すっかり<習慣化>したのか、今度は「Dr.コトー診療所」が見たいと泣かせるような台詞を吐いてくれました。

 

今、二月の公開が待ち遠しくてたまらない映画があります。「モリコーネ」です。「映画が恋した音楽家」という副題がついています。上映時間が2時間37分もあるのに、「そんなに長い間堪能できるのか」と逆に嬉しくなります。

ポスターは、モリコーネの背中のアップです。指揮者だから当然なのかもしれませんが、以前書いたように背中で語るのは、健さんとランボー、「バイオハザード」のミラ・ジョヴォヴィッチ以来です(笑)。

 

「桜色の風が咲く」は、初め「風が吹く」と覚えていました。普通はそう言葉が続きますよね。でも、予告を見てそれが分かりました。嗅覚で桜の開花を感じ取り、風が運ぶ香りで綺麗に咲き誇っているのを感じるからなのです。

「よだかの片想い」のポスターはよく見ると、主演の松井玲奈さんの左頬にあざのようなものがあります。初めは紙の汚れかとも思ったのですが(女優ですし)、傍らには「あなたに、私の左側にいてほしい」という惹句が。そして、「片想い」というタイトルですから尚更意味深で、鑑賞意欲をそそります。

相手役は「偶然と想像」「いとみち」にも出ていた中島歩さんで、ちょっと気になっています。もう一つのビジュアルは、ボートに乗っている松井さんが右に座る中島さんにもたれかかり、左頬のあざが目立ちます。うーん、どういうオハナシなんだろう?  そのナゾに迫るべく、また今日も私は映画館の暗闇へと向かうのです。                        (沼田)