◆ロバート・レッドフォードが亡くなりました。銀幕の大スターだったのはもちろん、監督でもあり、晩年はサンダンス映画祭で後進の育成に尽力するなど、その功績は計りしれません。
訃報に接して壁新聞にしたためるには時間を要しそうなので、やはり往年の大スターだったアラン・ドロンについてしたためた、1年前の136号をご紹介します。
そういえば、健さんが亡くなった直後、文太さんの訃報が続いたんだということを思い出してしまいました。
尚、本文中にあるBB特集は、企画倒れに終わってしまいました。
◆『まちポレ壁新聞』最新168号『「銀幕」』(9/12発行)は、5階ロビーに掲示中です。
※141号以降のバックナンバーのファイルもあります。
まちポレ壁新聞 №136 2024年8月23日
映画=邦画+洋画
駅前純情シネマ その30
アル・パチーノのことを「アイドル歌手の歌にもなった」と書いたわずか2日後、今度はその歌のタイトルのもう一方、アラン・ドロンの訃報が飛び込んできました。88歳と高齢で、病気療養中という記事も目にしていましたが、ショックでした。ちょうど自分が映画を見始めた頃の「雲の上の大スター」といった存在でしたから。
そう書いても、「会いに行けるアイドル」が一般的な今の世代にはピンとこないかもしれません。とにかく、<銀幕>でしか会えない異次元の二枚目、まさに<別世界の存在>であったのです。
初めてスクリーンで対峙したのは「太陽がいっぱい」。もちろん再映ですが、これが最初だったからこそ、尚更「雲の上」というふうに感じたのかもしれません。
燦燦と輝く太陽、名匠ルネ・クレマン、名手アンリ・ドカエ、ニーノ・ロータの甘美で哀切なメロディ、マリー・ラフォレの美貌、そして極めつけが主役は陰のある二枚目。名作となるべく映画のすべてが揃った奇跡のような傑作。私がアラン・ドロンとイコールで結ばれるシルエットは,オレンジの太陽と青い海をバックに船の舵の脇に立つこの作品のメインビジュアルです。
一方、リアルタイムで私が見た作品は「ゾロ」以降なので、どちらかというと過渡期、脱二枚目を目指していたころでした。口ひげをたくわえた「ル・ジタン」、カーリーヘアの「友よ静かに死ね」、大ヒットパニック映画シリーズの機長に扮した「エアポート80」(シルビア・クリステルも出ている珍品)など、この辺はかなりマニアックなファンでないと浮かんでこないかも。むしろ晩年は、ダーバンのCМの方がお茶の間ファンにはなじみが深いかもしれませんね。
また、ドロンの映画を振り返ると、「冒険者たち」のジョアンナ・シムカスを除けば、浮かんでくるのは女優よりも共演者の男優ばかり。チャールズ・ブロンソン、三船敏郎、リノ・バンチュラ、ベルモンド、そしてジャン・ギャバン。ドロンとは対極に位置する、男くさい役者ばかりが並びます。
今回の訃報に接して残念だったのは、マスコミの扱いの小ささ。テレビも新聞ももっと大々的に報じるべきニュースだったと思えてならないのです。たまたま翌日が新聞休刊日に当たったとはいえ、地上波では追悼放映の記事も目にしないし。これは晩年のスキャンダルのせいなのか、あるいは今のフランス映画の立ち位置を物語っているのか?
いつもの長いあとがき
「太陽がいっぱい」を除くと、ドロンの過去作はテレビでの鑑賞がほとんどになります。だからドロンというと必然的に、吹替を担当していた野沢那智さんも浮かんできます。
今のように話題作りのために人気タレントを充てるのとはワケが違います。俳優と声優はイコールだったのです。例えば、ジャン・ギャバンと言えば森山周一郎さん。リノ・バンチュラも充てていましたね(少し分かりやすく換言すると、ポルコ・ロッソの声)。視聴者は、野沢那智さんと森山周一郎さんが語る台詞だからこそ、物語に没頭することができたのです。
まれに声優が変わったりすると、クレームの嵐でした。
「風と共に去りぬ」が日本テレビで初放映(のはず)されたとき、ビビアン・リーの声を充てたのは栗原小巻さんでした。日本を代表する女優には違いありませんが、スカーレット・オハラのイメージにはそぐわないという声が多かった記憶があります。
今、劇場公開する洋画は、日本語吹替版が中心です。まれに何で字幕の上映回数が少ないんだという声もありますが、需要が少ないんだから仕方ありません。
私自身は、英語力はありませんが、それでも俳優の生の声を聞きたい派です。しかし、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に吹替版があったら子供でも楽しめたのにもったいないと述べた小林信彦氏の意見には賛同します。「E、T、」だって吹替版があったら更にとてつもない記録を更新したに違いありません。つまり、吹替版があれば間口が広くなり、小さい頃から洋画に目覚めるきっかけになるかもしれないのです。適切な例ではないのを承知で言えば、「モンティ・パイソン」は絶対に吹替版で見たいじゃないですか‼
劇場に身を置く立場からすると、もっと洋画にも触れてほしいのです。
アラン・ドロンは88歳での大往生でしたが、90歳の現在もバリバリの現役で活躍されている草笛光子さんが主演した「九十歳。何がめでたい」がヒットしています。見ると元気が出るのがヒットの要因かと思っているのですが、フランスのブリジット・バルドーも同じ90歳と知り驚きました。しかも、いまだに存命中と知り(失礼)2度びっくり。
そのBBの主演した往年の話題作を、近日特集上映いたします。
まだ詳細が未定で、何をどれぐらいの期間上映するかはこれからですが、私自身活字や写真でしか知らないBBの作品にどんなお客様が集ってくれるのか、第三者的興味もあります。ファッション目当ての若い女性まで来てくれたらウレシイですね。
同様に古い作品を積極的に紹介しているザジフィルムズの、「夜の外側」と「本日公休」の2作も上映決定。前者は、5時間40分一挙上映、後者は台湾の作品。「髪結いの亭主」を連想させるポスターで、待ち遠しい‼ (沼田)