壁新聞

【『まちポレ壁新聞 -電子版-』更新しました。】Vol.100

◆区切りの100回目ということで、通巻100号を読み返してみたら、既にアーカイブで取りあげていました。最新号の内容に絡む150号も同様。そこで方向転換して、たまたまBSで「風とライオン」を約半世紀ぶりに見たこともあり、同じジョン・ミリアス監督の「ビッグ・ウェンズデー」を中心にまとめた、初期の9号を取りあげます。

 

◆『まちポレ壁新聞』最新171号『映画の扉』(11/1発行)は、5階ロビーに掲示中です。

※151号以降のバックナンバーのファイルもあります。

 

まちポレ壁新聞  №9  2019年4月1日

青春のバイブル

タイトル未定の新しいコラム (その9)

 

意外な話を聞いた。

某ショッピングセンターにある全国チェーンの某テナント従業員の間で、いわき店勤務希望者が溢れかえっているというのだ。その理由というのが、何と波乗り。サーファーたちの間ではいわきの波が人気らしい。

 

その話をもたらしてくれた知人に、「ビッグ・ウェンズデー」は見ましたか?と話を向けると、見たのはもちろん、DVDまで所持しているとのこと。

となると、当然話は続いて──

「あれ、エンドロールに日本語のイメージソングが付けられて、悪評プンプンだったんですよね。それまでの感動がラストで一気に台無し」って。

「でも、すぐにオリジナルに差し替えられたんだよ」「オレが持ってるのはそのオリジナル版」と、ディスクを差し出してくれたのです。

「じゃ、ラストの数分だけ見ようかな」

 

そんな経緯で、30数年ぶりにわが青春のバイブルとでもいうべき名作とのご対面となりました。

 

全く色褪せていない。ラストの数分どころか、全編通して見返してしまった! 昔見たときには気付かなかったり、忘れていることが多々あり……。

 

オープニングのタイトルバックに映し出されるモノクロの写真からすでに映画の世界へ引きずりこまれる。その中の一枚に釘付けに! ボードを持ったジョン・ミリアス監督自身の若かりし頃と思しきスナップが(あとで調べてみたら、まさしくそうだった)。監督自身がサーフィンに明け暮れ、かなり自伝的要素の色濃い作品だったというのを再認識させられました。

画面からにじみ出る抒情性はそのためでしょうね。

 

もう一つ。全く印象に残ってなかった音楽の素晴らしさ! 担当したのは監督の盟友で実質的なデビュー作らしいけれど、感情を手繰り寄せ、見事としか言いようがない。

 

ただひとつ残念なことが。それは、つい何週間か前に、主演のジャン=マイケル・ビンセントの訃報が届いたこと。

本作以外では、「爆走トラック’75」など主にB級アクションが思い出されるぐらいですが、でも私はこの一本だけでも充分だし、この作品とともに、彼の名は永遠に、ファンの心に刻み込まれるのは間違いないと断言しますね。

 

いつもの長いあとがき

 

「ビッグ・ウェンズデー」が公開された1979年という年は、私にとってもう一本忘れられない作品との出会いがありました。

「リトル・ロマンス」です。

 

小品ながらも、ジョージ・ロイ・ヒル監督の職人芸が堪能できる佳作。

とにかく、これがデビュー作となったダイアン・レインの魅力炸裂! 私もスクリーン誌の人気投票では票を投じてました。いわきの映画ファンは、2月の映画祭で上映した「ストリート・オブ・ファイヤー」で初めて彼女を知った(見た)という方もいるかもしれませんね。

 

相手役の少年が放つ、過去の映画の名セリフにはクスッと。彼は確か、俳優の道は選ばず、学業に専念したはず。

 

そして、脇に徹した、しかし彼がいなかったらこの映画は成立しなかったであろう名優ローレンス・オリビエと、母親役のサリー・ケラーマン。この女優さんは名前を聞くだけで自然と笑みが(笑)。まさに<スマッシュ>ヒットと親父ギャグを飛ばしたくなる。

 

音楽は、ジョルジュ・ドルリュー。繊細で、愛おしさと切なさを感じさせる名品。サントラはあるけどLPだから、実家に行かないと聞けないのがもどかしい。

 

更に、角度を変えて書くと、この作品はオライオン・ピクチャーズの第1回作品でもある。「ターミネーター」や「プラトーン」「羊たちの沈黙」など、幾多の名作を製作・配給した会社です。残念ながら倒産してしまいましたが。

 

また、私が学生時代にアルバイトをした映画館の開館番組(「ラッシー」と2本立て)でもあるので、なおのこと思い入れが深い。

 

この年、その映画館では「木靴の樹」も上映してくれたんですよ!

映画ファンにとっては夢のような年でしたね。

この3本が、この年の私のベスト3です。

他にも、「復讐するは我にあり」「ディア・ハンター」「エイリアン」が前後して公開されていたし。

 

だから、いろんな切り口から、この年を語ることができます。

例えば、「木靴の樹」と言えば当然岩波ホールだから、それに絡めて「ナポリの隣人」に急に飛んでしまうとか(笑)。でも、岩波ホールと同時期に同じ作品をいわきで上映できるなんて、とんでもないことですよね。    (沼田)