◆<55年前の新作>が売りの「男女残酷物語/サソリ決戦」をチェックしようとしたら、いきなり冒頭からいかにもこれぞ往年のイタリア映画!という感じの音楽が流れてきて嬉しくなりました。配給のアンプラグドは「殺しを呼ぶ卵」といい、よくこんなのを<発掘>してくるよなぁと感じ入ってしまいます。担当の方と電話でお話ししても、本当に映画をよく知っていらっしゃる。
そんなわけで今回は、映画音楽についてしたためた5年半前の7号をご紹介します。見出しは、感激と劇伴を掛け合わせて付けたのかな、多分。
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※111号以降のバックナンバーのファイルもあります。
まちポレ壁新聞 №7 2018年11月27日
感・劇・伴
タイトル未定の新しいコラム (その7)
訳あって「ザ・ロック」をビデオで再見した。珍しく妻も付き合って、深夜劇場の開場。初見の妻は一気に見たけど、私は<確認したいこと>があったために封切以来の再見だったので、2回に分けて。その<訳>は後述しますね。
№5で挙げた映画評論家(注/淀川長治、荻昌弘、河原畑寧、双葉十三郎、関光夫の各氏)のうち、一人だけなじみの薄い方がいたと思う。関光夫さん、正確に言えば<映画音楽評論家>とでも言えばいいんでしょうかね。日本における最初の映画音楽ブームの立役者といわれる方です。ただ、創刊号の「冒険者たち」、レティシアと聞いて胸ときめく世代の方にとってはおなじみの名前かとは思います。
例えば、「鉄道員」「ブーベの恋人」「汚れなき悪戯」といった作品は見ていなくても(私も)、あるいは題名は知らなくても、シニア世代の方々はその主題曲は必ずや耳にしているはずです。
もう少し世代を下げれば、「ゴッドファーザー」(暴走族でおなじみ)、「白い恋人たち」「ロミオとジュリエット」の曲を知らない人はいないでしょう。
高校のころ、NНK-FMで月に1回オンエアーしていた映画音楽特集、FM雑誌をチェックしては<同時録音>してたものです。だって、今のように配信でいつでも好きな音楽が手に入る時代ではないし、限りあるお小遣いではそうそうサントラを買えるわけもないから。主題曲だけでなく、サントラから数曲かけてくれたり、作曲家にスポットを当てた特集を組んだり。それによって逆にアルバムが欲しくなって買い求めたこともあります。とにかく、この番組から受けた恩恵は計り知れません。
この番組の進行役だったのが関光夫さんでした。
アルフレッド・ニューマン、ミクロス・ローザ、ディミトリ・ティオムキン、エルマー・バーンスタインといった映画音楽の大家たちは、全部この番組を通して教えてもらいました。あの20世紀フォックスのファンファーレがアルフレッド・ニューマンによるものと知ったのは後年になってからのこと。
今では、史劇や西部劇自体が廃れてしまいましたが、例えば、「ベン・ハー」や「十戒」には<それなりの>序曲が必須だし、「ジャイアンツ」「大いなる西部」には壮大なスケールを予感させる音楽がないと始まらない! 早坂文雄の重厚な「侍のテーマ」に対して、リメイク版は、エルマー・バーンスタインの軽快でリズミカルな音楽が対極にある。その「荒野の七人」だけでなく、「大脱走マーチ」も然り。あの音楽を聴くと、オールドファンは誰しも草原をバイクで疾走するマックイーンを思い出しますよね。
何だか、関光夫さんについて触れようと思って書き出したのに、タイトルの羅列に終わった感は否めませんが、きっかけは全て氏のおかげということです。
いつもの長いあとがき
冒頭に書いた<訳>というのは、つい最近上映した某映画の音楽のサビの一部
が、ある作品にクリソツで、あれ、この音楽何だっけ?と気になり……。
最初に浮かんだのが、「クリムゾン・タイド」。これは愛聴盤なので、多分違うなと思ってたけど、消去法で。サントラ聴いたら、やっぱりハズレ。
で、第1候補だったのが「ザ・ロック」だったというわけ。妻は、そんな理由で…と呆れてたけど、最後まで見て、「ヅラコンビで面白かった」と言ってました。私の方は、ピンポーン!だったので、別の意味ですっきりしましたね。
ところで「ザ・ロック」は、エンドクレジットに「ドン・シンプソンに捧ぐ」とスーパーが出ます。ジェリー・ブラッカイマーと組んで数々の超大ヒット作を連発したプロデューサーでしたが、本作が遺作となってしまいました。
私はこのコンビの作品は未見のものが多く、語る資格はないのですが、「フラッシュダンス」「ビバリーヒルズ・コップ」「トップガン」と挙げていけば(見事に全部見ていない)おのずと傾向がはっきり分かりますよね。特殊効果+大物スター+サントラ。これは単独になってからも変わりませんね。直後が「コン・エアー」「アルマゲドン」だし。
「クリムゾン・タイド」は監督色が出ていたと思うけど(というより脚本参加のタランティーノ色か)、あとはマイケル・ベイ、サイモン・ウェストの映画なのか、プロデューサーの作品なのか…という感じ。
話しを映画音楽に戻しますね。
この頃はあまり映画雑誌を読まないので事情に疎いのですが、関光夫さん亡き後は、柳生すみまろさん、そして最近は賀来タクトさんですかね、映画音楽の第一人者といえるのは。賀来さんの文章は、熱意と愛情が溢れていて、読んだ後はサントラが欲しくなっちゃいますね。内容は忘れたけど、だいぶ前にダニー・エルフマンに関して書いていたのに共感を覚えた記憶が…。
この原稿を書いてたら、なんだか突然「大空港」が見たくなってきた。確か、高校のころテレビで見て面白かったという記憶がある。淀長さんの前振りがついていたような気がするけど、水野晴郎さんだったかも…。パニック映画のはしりになった佳作だけど、「ぼくの採点表」によると、2時間17分もあるから、だいぶハサミが入ってたみたいですね。ビデオでもいいや、アルフレッド・ニューマンのスコアに触れたいというのが、最大の理由だから。
例えば、ニーノ・ロータの「太陽がいっぱい」のような甘美なメロディではないけど、「エクソシスト」や「ジョーズ」などと並んで、映画音楽史に残る名スコアですよ。
と、ここで終わりにすると、ニーノ・ロータといえば⇒当然フェリーニ⇒「道」⇒「日日是好日」という、次号への布石と見せかけ…(ご想像通り)。 (沼田)