壁新聞

【『まちポレ壁新聞 -電子版-』更新しました。】Vol.63

◆冒頭にお詫び。10/1に発行した電子版63号は、過去に電子版32号で取りあげていましたので、削除いたしました。大変失礼いたしました。
もともとは、最新137号の元ネタとなったハシゴに触れた今回の112号を再録するつもりではいたのですが、友人たちが映画祭の開催に向けて奮闘していることから方向転換したものでした。

◆『まちポレ壁新聞』最新137号『災い転じ』(10/1発行)は、5階ロビーに掲示中です。
 ※121号以降のバックナンバーのファイルもあります。

まちポレ壁新聞 №112  2023年6月16日

明と暗

駅前純情シネマ その6

 夕食後にテレビを見ながらくつろいでいたら、バラエティ番組で世代別のアンケートクイズをやっていました。10代から80代までで、夏をイメージする歌は?というのがあり、結果、井上陽水さんの「少年時代」がシニア層の一位にランキングされていました。私も夏の終わりになると必ず思い出す名曲です。篠田正浩監督による映画も(1980年)、陽水さんの歌が流れるラストシーン、列車、別離、トンネル、主題歌、そんなキーワードがあれば必ずや取りあげられる秀作だと思っています。
 
 同様に、卒業からイメージする曲というアンケートでは、シニア層はやはりというべきか、ユーミンの「卒業写真」が上位に食い込んでいました。その街頭インタビューで印象的だったのは、『昔は、撮る方も撮られる方も真剣だった』というものです。確かに、フィルム時代は一発勝負だったし、撮るだけでなく現像して焼きあがって初めて写真として成立するものだったから、その場で見られないという不安と楽しみが同居していました。
 加えて、お金も絡んできます。現像代+プリント枚数分と考えると、簡単に『とりあえず撮っておくか』とはいきません。デジタル時代の今とは歴然とした差があります。

 この『撮る』の部分を『見る』に置き換えると、『とりあえず見ておく』というのは、2本立ての頃はけっこうありましたね。
まちポレは、一日一回の上映が普通で、多い時には一日に8作品上映しています。作品の長さがそれぞれ違うから難しい場合もあるのですが、スクリーン①②関係なく、その気になれば4作品がハシゴできるようには組むようにしています。ただ、全部見たいとは思っても体力もいるし、お昼だって食べなくちゃだし。あまり気乗りしない作品が間に入っているときは、みなさんどうしているのでしょうかね? (ハシゴ割引で)千円だから、『とりあえず…』とご覧になるのでしょうか?

先日、「共に生きる 書家金澤翔子」を見ました。混み入っている週に、地元だからと無理言って組み込んでいただいた作品です。
 お母さんの泰子さんが主役だったというのは予想通りでしたが、『何度も、二人で死のうと思った–』と惹句にあるような暗さは全く感じませんでした。これは、『全然緊張しない』とケロッと言ってのける翔子さんの天性の明るさからくるものです。『涙の般若心経』や、ラスト近くに垣間見える商業主義との対立は、もっと深く掘り下げてほしかった気がしましたが、もう一度翔子さんの作品と対峙したくなりました。でも、遠野の金澤翔子美術館は土日だけの営業に変わっちゃったんですよね。

いつもの長いあとがき

 私が映画を見る場合、今では一日一本が普通になっているのですが、先日は久しぶりにハシゴを体験。「波紋」→「聖地には蜘蛛が巣を張る」という並びです。思い出したのが、「さがす」を見たときの心境でした。見る前の憂鬱→見た後の充足感。まさしくそれだったのです。今回は二本ともほとんど予備知識がなかったので、尚更見ていくうちに暗澹たる気分には陥りましたが(笑)。

 前者に主演している筒井真理子さんは、出ているというだけで安心感、信頼感があります。あとの予備知識と言ったら、光石研さん、それと監督。それだけ。ポスターもイメージポスターだし。磯村勇斗クンに至っては、『いい役者だなぁ。似てるなぁ』と思いながら見ていて、エンドクレジットで初めて分かったほど(笑)。
 それにしても悲惨な話です。失踪、新興宗教、障がい、癌。およそ陽(よう)のイメージの湧かないもののオンパレード。とても人に勧められたもんじゃありません(笑)。それでも私はかなり気に入り、もう一度見たいとさえ思っています。かなり、毒素の強い作品ではあります。

 後者に至っては、それを上回るほどの陰惨さです。
 こちらも白紙に近い状態で、事前に仕入れていたのは、「ボーダー二つの世界」の監督、カンヌで評判になった、これだけです。あ、クライムサスペンスという紹介も見てました。しかし、犯人逮捕で終わらず、そこから二転三転します。レイティングはR15でしたが、成人指定にした方がいいんじゃないの?というぐらい正視に耐えない場面の連続です。しかも、イランで実際にあった連続殺人事件をベースにしているというから驚きます。
 本作と前作との二本で、アリ・アッバシという監督名は今回、完全にインプットされました。ただ、興行的には苦戦中。上映も折り返し点。なるべく多くの方が目に留めてほしい作品です。

 作品の本筋からは外れるので最前では触れなかったのですが、光石研さんはデビュー時からの御贔屓です。会心のデビュー作「博多っ子純情」はもちろん、柳沢慎吾ちゃんと一緒に、薬師丸ひろ子ちゃんの公認?親衛隊にいたのもリアルタイムで知っています。
 「波紋」公開直前のバラエティ番組にゲスト出演していて、一緒に見ていた妻は、「おしん」で、あの有名な筏下りの場面に出演していたというエピソードを知るやいなや、早速録画していた「おしん」を再見しては涙していました。
 今ロビーに置いているフリーマガジン『DOKUSO』では表紙を飾り、特集もされています。脇役にスポットが当たるのはウレシイですね。    (沼田)