◆暮れも押し迫ってきて、映画賞やらベストテンだという声が聞こえてくる時期となりました。そこで今回は、そのベストテン選びに疑問を呈した127号を紹介します。最新版が142号だから、今年は大体2箇月で3回というペースでの発行でしたね。
◆『まちポレ壁新聞』最新142号『運命の日』(12/17発行)は、5階ロビーに掲示中です。
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まちポレ壁新聞 №127 2024年2月29日
賞の権威って?
駅前純情シネマ その21
キネマ旬報のベストテンが発表されました。今では国内どこもかしこも映画賞(映画祭)だらけで、その権威の実態がどのようなものかは不明ですが、日本で一番歴史や知名度があって、映画評論を生業とする多数の評論家が選んでいるということだけは間違いないでしょう。同時に、監督や俳優などの作り手側も、選ばれたら<名誉>だと感じていますよね。
私自身が映画を生業としているし、ミニシアターをみていることもあり、若いころほどではないにしても、発表も順位も楽しみにし、また気にもしています。
しかし、ちょっと疑問符が付いてしまうようなこともあります。
人の好みは千差万別なので、いい悪い、好き嫌いが出てくるのは当然ですが、それ以前に、ベストテンクラスの作品を未見のまま平気で選者に加わる方がいて、プロの姿勢としてどうなのかと首をかしげてしまうのです。
以前にも書きましたが40年以上も前、松田政男氏の、「わずか30数本しか見ないで選出に加わる○○こそどうなんだ」という発言を引き合いに出さずにはいられません。
これは、ベストワンに選ばれた「幸福の黄色いハンカチ」(1977年)を選出していないのはどうなの?という大黒東洋士氏の発言を受けてのもので、○○部分には、当時芸能リポーターとして活躍していた方の実名がありました。
かねがね私は、一覧表には、未見作品に対して斜線などのチェックを入れるべきだと思っています。選ばなかったのと、「選べなかった」のとでは大違いだからです。ましては、プロの書き手が対象なのです。
いま日本では、確か数百本単位の邦画洋画が封切られているはずです。その全てを見ることは物理的には不可能にしても、見て書くことを生業としているのならば、当然押さえておかなければならない作品ぐらいは、見てからモノを語ってほしいなと思います。言ってみれば<義務>とも言えるそれをしないでベストテン選出に参加するというのは、プロとしての自覚が足りないと言わざるを得ません。ましてやキネマ旬報のベストテンといえば残るし、後年<物差し・指標>とされるわけですから。
そういう私の我が身を振り返ってみると、長患いが完治せず咳込むときがあり、いまだに映画館で見られずにいます。突然咳込んでしまうときがあるのです。同席になったお客様のことを思うと、もうしばらく、映画館で見ることは叶いそうにありません。とりあえず<復帰戦>は「カラオケ行こ!」あたりかな? 「コット、はじまりの夏」「PERFECT DAYS」といった<静かな作品>は下手したら未見のまま終わってしまうかも(泣)。
いつもの長いあとがき
しかし、賑やかなインド映画だったら、そんな悩みとは無縁かもしれませんね(笑)。
…と書き出した文を読んで、ウンウンと首を縦に振ったアナタ、それは大きな偏見ですゾ。
確かにマサラ上映に代表されるようなハデハデな作品、次回4月の『インド印映画まつり』でいえば、メインはもちろん「バンバン!」に違いありませんが、一緒に組んだ2本こそがまちポレの真骨頂と思ってください。今の日本ではなかなか見られない作品に違いありません。
その「僕の名はパリエルム・ベルマール」と「ガンジスに還る」の2作品は、
『インド印映画まつり』と題した特集上映を始めるにあたり、山田タポシさんから推薦されていた作品です。解説コメントを読んでやりたいとは思いつつも、ちょっといわきでは無理だなというのがその時の印象でした。しかし、前回の「パッドマン」「人生は二度とない」の結果(動員)を見て、考えが変わりました。知名度のある作品をやってもそれが集客に結びつかないのなら、本当にやりたい・見て欲しい作品を上映しよう、そして毎回トークゲストに来ていただいている山田タポシさんに対して恩返しをしよう! その上で、その作品の魅力をたっぷり語っていただこうと思ったのです。私自身も今から楽しみで仕方ありません。
昨年、「さらば、わが愛/覇王別姫」のリバイバル上映に狂喜したワタクシですが、今年4月には何と「ピアノ・レッスン」の上映が決まりました。打診があって即二つ返事でお願いしましたよ。
これ、ちょうど30年前のキネ旬ベストワン・ツーですからね(後者が1位)。
この2作品はちょっと因縁めいています。日本公開日が1日違い。そして、「スクリーン誌」では順位が逆転(と記憶しています。ウラどりはしてません)。そして今度はリバイバルが1年違い。30年前と言えば、自分自身ももっと映画を見ることに時間を割いていたし…。
偏見を承知で書きますが、ベストテンの11位から20位になった作品の顔ぶれを見ると、その年が質的に豊作だったか分かると思っています。このランクになる作品は、ちょっとクセや難があったりし、当然好みが分かれ、必然見ていない選者がいたりすることがあるわけです。私が最も映画を見ていた1980年のキネ旬洋画は、⑪悲愁、⑫スター・ウォーズ帝国の逆襲、⑬ローズ、と続き、同年の私的ベスト作品とほぼイコールですから。更に⑭以下に、キューブリック、フェリーニ、タルコフスキー、イーストウッド、エイゼンシュタインがひしめいているのですよ。まさに映画史じゃないか! (沼田)