壁新聞

【『まちポレ壁新聞 -電子版-』更新しました。】Vol.79

◆掲示用の最新号と電子版のアーカイブは、内容やタイムリー性を関連付けて発行するようにしているのですが、今回は話題が浮かばず、だったら桜がらみの〇号にしようと思いながらバックナンバーをめくっていた時に目に留まったのが、4年前の37号。

東映本社の丸の内東映会館が再開発のため、この7月をもって閉館となります。5月からは、そのフィナーレに往年の名作がスクリーンを彩ってくれるということを思い起こしながらお届けします。

◆『まちポレ壁新聞』最新154号『映画館のある生活』(4/7発行)は、5階ロビーに掲示中です。

※121号以降のバックナンバーのファイルもあります。

 

まちポレ壁新聞 №37    2021年6月3日

 

映画館の記憶

 

Time My-Scene ~時には昔の話を~ (vol.2)

 

前号脱稿後、相米監督について調べていたら(注/「魚影の群れ」について触れたので)、「ほぼ日刊イトイ新聞」に於ける、「愛を積むひと」(2015年)をめぐる糸井重里さんと佐藤浩市さんの対談に行き当たりました。6回連載のかなり長いものなのですが、読みごたえがあります。

佐藤浩市さんは東映版の「青春の門」(1981年)でデビューしましたが、「魚影の群れ」のころでもまだ線が細く、<ジュニア>だなぁという感じで見ていました。芸能界でのスタートはNHKの「続・続事件」が先で、私はこのシリーズを見ていたはずなのですが、ちょっと記憶が曖昧…。

 

父は、言わずと知れた三國連太郎さん。

代表作は多々ありますが、やはり「飢餓海峡」(1965年)でしょう。

私はこのリバイバル公開を、新宿東映ホール1で見ました。主人公の役名を憶えている、あるいはそれが映画史に残るというのはそうそうあるものではないですが、この「犬飼多吉」というキャラクターは間違いなく、数少ないその一人と言えるのではないでしょうか。

リバイバルとはいえ映画史に残るこの傑作の、しかも3時間余の完全版に若い頃出会えたことは幸運でしたね。

 

ここ新宿東映会館には、随分とお世話になりました。

もともとは新宿東映という大劇場を分割したそうで、その2階客席部分を改装して造った東映ホール1に足を踏み入れた時の衝撃!  甲子園のアルプススタンドかと見まごうほど(行ったことないですが笑)の急傾斜。

あと、タイトルは思い出せないけど、もう一本東映セントラル作品を見たな。

東映ホール2は、隣接する違う映画館のロビーを改装したそうで、サイズ感はちょうどまちポレのよう。ここで見たのは「がんばっていきまっしょい」(1998年)、そしてその感動の夢よ再びと追いかけた、2年後の「はつ恋」。田中麗奈ちゃんのこの二作については、いずれ取りあげるつもりなので触れませんが、後者のパンフが製作されておらず、いい歳こいて、代替のフォトブックを買い求めたハズカシイ記憶が甦ります(パンフがあっても購入したかも笑)。

それと、「竜二」(1983年)もここでした。作品自体も忘れられない出来でしたが、当日の会場には何と伊丹十三さんも来場されており、座席中央にトレンチコートの襟立てて大股開きで座っているのですよ(←チラ見)。まちポレの場内に例えて想像してくださいな。落ち着いて鑑賞できますかってんだい(笑)。

 

見たのは多分これら数本だけなので、「随分と」という言葉は適切ではないかもしれませんが、ずっしりと<密度>の濃い作品たちばかりでした。

尚、ここは今、新宿バルトというシネコンビルになっています。

 

いつもの長いあとがき

 

当時、都内で単館系の映画の前売券を買い求めるとき、私はなるべく、池袋の文芸坐しねぶてぃっくを利用するよう心がけていました。

知人が勤務していたということもありますが、プレイガイド機能だけでなく、映画関連の本や雑誌、グッズなども扱っていたからです。「文芸しねうぃーくりぃ」(だったと思う)という番組表を手に取り、コラムを読むのも楽しみだったし、併設されていた喫茶店も何度が利用しました。

チラシなどの紙類も大量にあり、単純にそこにいて楽しいからでしたが、「応援したい」という気持ちもありました。額は微々たるものですが、販売手数料が入るからです。

ちょうど今のポレポレ東中野がそんな感じですね。1階に喫茶店があり、パネルが掲示され、チラシがどどどーっと並べられた階段を地下に降りていく構造。前に何号かで記しましたが、この時からもう映画が「始まっている」のです。

 

山手線で、池袋の隣が大塚駅。

ここにあった大塚名画座も足繁く通った名画座でした。<センス>が良かったんですよ。特に「蚤の市」と銘打った埋もれた映画の発掘のような特集が秀逸でした。そういうのはディスプレイにも表れていて、「本日のBGM」と題したポップとともに、LPジャケットをステージ袖に飾ったりして。これはいいなぁと思って、バイト先の映画館の支配人に進言したら採用してくれました。

大塚名画座は3階にあり洋画専門、同じビル地下の鈴本キネマが邦画の名画座でした。こちらを利用する頻度は少なかったけれど、「ダンプ渡り鳥」(1981年)という誰も知らないようなのも見たっけ(笑)。その二年前に、同じ関本郁夫監督が撮った「天使の欲望」はわずか一週間で打ち切られてしまったのに、幸か不幸かそれを見てしまった私は、どうにかしてこの作品を再見したいと願っているのですが、まぁ東映チャンネルでも契約しない限り、無理だろうなぁ。せいぜい春日太一さんの書いた本でも読んで、あの時代の〈空気〉を感じ取るしかないか。

 

春日さんの著書は「あかんやつら 東映京都撮影所血風録」しか読んでいませんが、驚いたのは著者の年齢。内容から70代ぐらいを想像していたら、まだ40代前半。全くもって変わった人がいるもんだわい。←誉めてます。

しかしすさまじいタイトル。「血風」なんて、初めて見たワ。

 

余談。

「愛を積むひと」の監督は朝原雄三さん。三國さんとは、晩年の代表作「釣りバカ日誌」シリーズで一緒に仕事をしています。繋がってたんですね。(沼田)