◆毎回ほぼ「日常映画館エッセイ」とでもいうべき内容の壁新聞。その本領発揮と言えるのが、今回紹介する90号。特筆すべきは、今では〈日常〉となったインドが初めて顔を出したこと。これ以降は、レギュラーになりました(笑)。
まちポレ壁新聞№90 2022年10月26日
ありふれた日常
Time My-Scene ~時には昔の話を~ (vol.55)
映画館勤務というと、世間的には不規則な生活というイメージを持つかもしれませんが、まちポレがメインとなる私の場合は意外と規則正しくて、夜7時半前には自宅にいることが多いです。
先日も同様で、帰宅して新聞を読みつつテレビのリモコンを操作すると、「スタンド・バイ・ミー」がオンエアーされていました。新聞を横目に読み、妻との会話も楽しみつつと世間向けには書きたいところですが、そんな聖徳太子状態は無理で、次第に意識の中心はテレビ画面へと向かっていきました。
「この映画、(スタッフの)○○くんが一番好きな映画」、「サントラを元カノがプレゼントしてくれた」、「男子はこれが好きという人多いと思うよ」などと能書きをたれてたら、「私はそれほど好きじゃない。だったら、逆パターンの『マイ・ガール』の方が好き」と妻が混ぜっ返します。「『マイ・ガール』は見てないけど、確かに常連の○○さんも好きだと言っていた」。うーん、やっぱり男女の違いか。おませさんの女の子は、この少年たちのようにバカなことはしないものね。
「スタンド・バイ・ミー」は、学校の映画教室で何度も上映したっけ。学校側が希望する時期にめぼしいのがないとき引っ張り出す、「困ったときの」的存在でもありました。王監督の「ピッチャー、鹿取」みたいなもんです(古過ぎ)。他には「ビルマの竪琴」や「植村直巳物語」もそんな存在でしたね。
今回は「サバカン」を見た後だったので、自然とついつい比較してしまいます。「スタンド・バイ・ミー」は、さまざまなエピソードや男の子4人のキャラクター形成が秀逸だし、演ずる俳優たちも芸達者で、やはり軍配はこちらに上げざるをえません。上映時間が1時間29分と短いせいか、吹き替え版にもかかわらず最後のクレジットまでノーカットだったのが意外でした。それを見ていたら、サントラ盤に収録されていない曲がたくさんあったのですが、やはり権利関係からでしょうか?
先日は妻が、タイの山間部で暮らす貧困家庭の少年のドキュメントを真剣に見ていました。主人公の少年は、村の男衆が総出で川に掛けた、蔦で作った吊り橋からサンダルを落としてしまうのです。でも、貧しい環境ゆえ、新しいサンダルよりも兄弟たちのパンを買うことを優先します。
このエピソードを見た妻が、(ポレポレ)映画祭でもこんなのあったよねと言ってくれました。「世界の果ての通学路」のことです。何と妻は、当時小学生だった息子を映画祭に連れ出したのです。今考えれば、よく一緒に行ったなぁと感心半分、拷問半分です(笑)。でも、子どもなりに感ずるものはあったようで、感想文を提出したら先生に褒められ、更に、誘ったお母さんも偉いねと添削してあったと、鼻高々に語ってくれました(笑)。
いつもの長いあとがき
日常をそのまま捉えたドキュメンタリー作品の公開が、最近増えてきました。もちろんこれは、映画館に掛けるソフトの不足というのが実情でしょう。
当初はラインナップになかった「瀬戸内寂聴 99年生きて思うこと」を急遽組み込んだのは、予定していたアニメ映画の公開時期が合わなかったためですが、告知期間が短かったにもかかわらず、予想以上のお客様にご来場いただきました。私も「心がささくれ立っているから見た方がいいですよ」と強く勧められましたが(笑)、都合が合わず。
映画館で映画を見るという行為自体も非日常ですが、その極致というべきものが〈応援上映〉ではないでしょうか?
実はこれまでも何度か行ってはいるのですが、皆さん〈控えめ〉なのです。
そこで、来月上映する『インド印し映画まつり』では、マサラ上映をすることにしました。ただ、コロナ禍ゆえ、無発声という縛りはあります。
上映作品は「マガディーラ勇者転生 完全版」。マサラ職人(笑)と字幕監修者をお呼びしてのスペシャルトーク付きです。
もう、打ち合わせのやり取りからして、笑うしかないスゴイ状況なのです(笑)。注意すべきは「ハマってしまう」ことのみ(笑)。
いわきでインド映画が上映されるのは、「サ―ホー」以来2年半ぶりになりますか。考えてみたら、あれもコロナ禍から大手の作品がストップしたための副産物と言えました。
今回は2本セットでのバランスを考えていたのですが、メインに考えていた「パジュランギおじさんと、小さな迷子」の配給権が切れていたために断念。更に「女神は二度微笑む」も同じく期限切れで、一から仕切り直しとなりました。バリバリの新作「RRR」には見向きもせず(笑)、どうせやるなら「マガディーラ」の完全版をと思い、こちらがOK出たので、これに「あなたの名前を呼べたなら」を組み合わせることにしました。おそらく皆さん(私を含めます)インド映画というと、①長い、②突然歌って踊りだす、というイメージしかないと思うのですが、それを覆してくれる作品に違いありません。
更に悪ノリついでに、どこかのタイミングで上映できないかと考えていた「ミーティング・ザ・ビートルズ・イン・インド」も、前週から組み込んでもらいました。カレーのキッチンカーもお呼びしたし、何から何までインド三昧ウィークとなります。 (沼田)