壁新聞

【『まちポレ壁新聞 -電子版-』更新しました。】Vol.34

◆帰宅後居間で寛いでいると、晩御飯の支度をしていた妻から「『遙かなる山の何とか』やってるの知ってる?」と声をかけられました。「『遙かなる山の呼び声』のこと?」と私。調べてみると、正続、過去二度に渡って放送されたドラマ版が未公開シーンを含めて再編集され、9月23日から放送されていました。そこで今回は、「北の国」と倍賞さんを合体させた2年前の78号をご紹介します。

◆『まちポレ壁新聞』最新119号『ほとばしる熱量』は、5階ロビーに掲示中です。
 ※101号以降のバックナンバーのファイルもあります。

まちポレ壁新聞 №78   2022年6月22日

北の国のさくら

Time My-Scene ~時には昔の話を~ (vol.43)

いろんな映画や俳優をアットランダムに取りあげているように見えて、実は何度も登場している人物や作品が多い壁新聞。要するに<好み>の問題です。
シナリオライターで言うと、山田太一さんや向田邦子さんは複数回、市川森一さんも何度か書いたかな。なのに大御所と言える脚本家で一度も取りあげていない方がいます。そう、倉本聰さんです。
実は、あまり御贔屓ではありません。なのに何で?とお思いでしょう。それは、何号か前に書いた<テレビ放映のついで効果>です。テレビつけたら「駅/STATION」がオンエアー中だったのです。1981年の製作だから、41年前の作品で、脚本が倉本聰さん。
封切時二十歳前後だった私は、世評と裏腹にピンときませんでした。なのに今回は、途中からぼーっと見ていたにもかかわらず引き込まれました。「舟唄」はこの作品とイコールで結ばれるほど有名ですが、前振り的にその2曲前に流れる「おもいで酒」なんて、全く記憶から消え去っていたぐらい。それが、当時の健さん、倍賞さんをはるかに上回るこの歳になると、何とも言えず染みました。もう一度全編通して見ておいた方がいいかな?

倉本さんの代表作と言えば、言わずと知れた「北の国から」ですが、私はこの国民的ドラマをほとんど見たことがなく(非国民と言われそう)、テレビの名場面集でかじった程度の知識しかありません。「全1冊」版は購入したのですが、ほぼ手付かずに近いまま、前任地の映画館ロビーにブックエンド替わりに置いといたら(映画の本や雑誌用の本棚がありました)、異動してきた支配人に書籍全てを処分されてしまいました。
ドラマで見た倉本作品は、「たとえば、愛」「昨日、悲別で」(ともにシナリオも読みました)、映画は「冬の華」「時計」、シナリオのみが「6羽のかもめ」「あにき」。あまたある作品群の中で多分これぐらいです。ただ、シナリオを読んだドラマは全部、大が付くぐらい好きな作品ばかりなので、少数精鋭とは言えるかもしれません。それなのに<のめり込まない>のは何故なのか、自分でも分かりません。

そういえば、倉本さんが主宰する富良野塾に入った女性スタッフがいました。
ドラマに出るということを聞いてチェックしていたら、風間トオルさんとバーカウンターでご一緒する場面での出演。確か台詞もあったはず。その後どうしているんだろう?

いつもの長いあとがき

余談。
友人が、「昨日、悲別で」を「昨日、ナカシベツで」と勘違いしてたことがあり、大ウケ。ま、架空の町悲別を、実際にある中標津と間違うのもむベなるかな。ましてやそこは倍賞さん演じる「民子3部作」の一つ、「遙かなる山の呼び声」の舞台となった地ですからね。更にその映画は友人が勤務していた会社の、3番目となる映画館のオープニング作品だったのですから。思い入れもひとしおだったのでしょう。そちらの地名の方が馴染みのあるのは必然ですね。

連続してテレビ放映された、「遙かなる山の呼び声」にしても「駅/STATION」にしてもついつい見入ってしまうのは、俳優たちの奏でるアンサンブルもあります。前者で情けない役を演じるハナ肇さんにしても、最後にちゃんと見せ場があります。もちろん山田作品の功労者だから、監督が用意してくれたのでしょうが。

また、「駅/STATION」封切時には全く無頓着状態だったけれど、松竹専属の倍賞さんが、いかに健さん主演とはいえ、他社の東宝作品に出るということに<障害>はなかったのかな? もし今だったら、そっちの方が一番気になるかも。
倍賞さんは、私が十代のころから一番好きな女優さんです。前出の作品群をはじめ、「家族」「幸福の黄色いハンカチ」にしても北海道のイメージが強いけれど、福島にも縁があります。震災の後にはいわきにもきてくださったし。「ハーメルン」なんて、コアなファンでも知らないかもだけど、昭和村の廃校になった学校でロケしたんですよね。未見だから詳細は不明ですが、本宮劇場での場面もあるとか。気になる。

今回いろいろ調べて初めて知ったのが、「幸福の黄色いハンカチ」で武田鉄矢さんのスタンドインを山田組スタッフの露木幸次さんが充てたということ。これには大笑い。「ヨッ、備後屋、相変わらずバカか」というフレーズが浮かんだ私です。美術(小道具)と役者と、どっちが本業?と突っ込みたくなります(笑)。

それにしても、憧れの倍賞さんの新作を封切で上映できる日が来るとは…。まだ、75歳にはなっていないけれど、つくづく生きててよかった思う日々。
「PLAN75」公開直後、その映画に主演した倍賞さんと同じぐらいのお年のご婦人から、最初のシーンについての説明を求められました。「まだ見ていないので」と言うと、傍にいた女性に同じことを尋ねていました。私が「これから見るお客様がいるので、ストーリーに絡む話はあちらで」とお願いすると、別のご友人を交え階段脇で長い間話し込んでいました。帰り際、「ごめんなさいね。ずっと話し込んじゃって」と仰るので、「いえ、それだけ語りたくなる作品だということですよ」とお返しすると、「ほんと、いい映画で感動したわ。あなたも早く見なさいね」と推奨されました。「はい、今週見る予定です」とお見送りして、女性はエレベーターの中へと。
蒸し暑かったけれど、心の中に涼風を感じた初夏の一日でありました。(沼田)