壁新聞

【『まちポレ壁新聞 -電子版-』更新しました。】Vol.37

◆このアーカイブシリーズは、およそ2年前に書いた40号台が何故か一番多くなっています。もっと初期の頃を取りあげようと思っていたのに加え、最新号で「浜の朝日の嘘つきどもと」に触れたこともあって、今回は39号をご紹介します。

◆『まちポレ壁新聞』最新122号『いつでも夢を』は、5階ロビーに掲示中です。
 ※101号以降のバックナンバーのファイルもあります。

まちポレ壁新聞 №39 2021年6月7日

至福へのいざない

Time My-Scene ~時には昔の話を~ (vol.4)

当館でも9月に上映予定の、「浜の朝日の噓つきどもと」の完成報告が都内で行われました。その席上、映画の内容にちなんで、監督と主演のお二人が映画館の思い出を語ったのですが、そのコメントが三者三様で実にユニークなものでした。

監督のタナダユキさんは、5歳の時に父に連れられて「影武者」を見に行き、禁止されていたコーラを買ってもらったことを挙げています。これが映画館初体験だったそうですが、おとーさん大丈夫? いくら「世界のクロサワ」とはいえ、普通、5歳の娘を「影武者」には連れて行かないでしょう(笑)。ウチの息子の映画館デビューは、3歳の時の「カーズ」でしたよ。この初期体験でタナダユキ監督の個性的な感覚が形作られたのかもしれませんね(笑)。

恩師役の大久保佳代子さんは、大学のレポート提出のために、浅草の映画館で神代辰巳監督の作品を鑑賞していたら、見知らぬオジサンからコーヒーをいただいた話を披露しています。これってナンパ?  それとも浅草という土地柄、神代作品故に(ロマンポルノか、「青春の蹉跌」「恋文」などの一般映画だったのか)、単に若い女性が珍しく嬉しくなっただけ?

ヒロイン、モギリ子(この、人を食った役名のいわれは映画をご覧ください)役の高畑充希さんは、先ごろ閉館してしまったアップリンク渋谷での、寝落ちする瞬間が至福だという、映画の主人公そのままのようなとぼけたエピソードを挙げています。

映画館で眠ること、それは別に恥ずかしいことではなく、高畑さんの言う通り至福のひと時と言えます。ゆったりとしたソファーに身を委ね、心地よい音楽と演出に酔わされ、お金を払い時間を合わせて見に来たにもかかわらず、いつの間に寝落ちてしまう快感。同時に感じる少しの後悔と後ろめたさ。
だって、つまらなかったんだものとか、夕べ寝不足でなどという言い訳をしながら…という体験は誰にだってあるでしょ!? でも、タルコフスキー監督の「惑星ソラリス」や「ノスタルジア」を見て、眠ってしまうのは正常ですよ(笑)。「やっぱりゲージツはムズカシイ」なとどと唱えながら。
私も先日見た「れいこいるか」は世評とは裏腹に、多少の眠気も覚えました。だってそれは夜中1時過ぎに帰宅して、朝イチの回だったから仕方ないじゃないの!と、ホラ、早速言い訳してる(笑)。 

いつもの長いあとがき

アップリンク渋谷には、2年前、隔週で行われたワークショップに通わせていただきました。そこでの浅井代表のトークも得るものがありましたが、夜の開講だったため、日中はいろいろなシネコンやミニシアターを見学し、たまには映画も見たりして、有意義な時を過ごすことができました。
参加のきっかけは、茨城県のあるミニシアターで行われた、浅井代表とシネマテークたかさき総支配人志尾さんとのトークショーに、弊社代表以下3名でお邪魔したことです。まちポレでも上映した「顔たち、ところどころ」の時のことでした。その時の様子は、紙面でも少し紹介しましたよね。

タナダユキ監督の「影武者」発言で、息子と初めて行った<劇映画>が「犬と私の10の約束」だったことを思い出しました。2008年の作品だから、息子5歳の時です。犬好きだった息子がテレビスポットから見たいと言い出したのか、それともワンちゃんにかこつけて、田中麗奈ちゃんの映画を見る口実に<利用>したのかは定かではありません(笑)。
地下にあった旧平テアトル①の最前列でかぶりつきで見たのですが、どちらの意志でそこに陣取ったのかも不明(ということにしておきます)。
2時間弱ある、5才の幼児にとっては長い作品でしたが、飽きずに最後まで見ていたようです。不確かな表現になっているのは、途中で息子にケリを入れられて起こされたからです(笑)。
同様の経験は、水戸内原に「かいけつゾロリ」シリーズを見に行ったときにもありました。全くもって「学習」していない親で申し訳ない(笑)。まぁ子どもにしたら、自分が夢中になって楽しんでいる横で居眠りされたら、ムッとするのも無理はないか。でも、こっちは高速をずっと運転しているわけで←出たよ、言い訳(笑)。

珍しく、これから公開する新作の話題で始まった今回は、締めも新作で。といっても1960年代に公開された作品のリバイバル上映ではありますが。

カトリーヌ・スパークという女優は、私の映画史には登場してこなかった方ですが、この度、「レトロスペクティブ」と題して、「狂ったバカンス」「太陽の下の18才」「禁じられた抱擁」「女性上位時代」の4本が、まちポレでもラインナップされました。
<小悪魔どころの騒ぎじゃない>という文字が躍っていますが、ボカシが入ってしまうのではないかというぐらい思わせぶりなタイトルのオンパレード(笑)。しかもすべて50年以上前の作品ですからね。
「ミシェル・ルグランとヌーヴェルヴァーグの監督たち」という企画も行ったザジ・フィルムズ、やりますね。ただ、公開する以上は<ポツンと一軒家>では意味がありません。見られてなんぼです。あまり詳しく書くとプロモになっちゃうので(笑)、キョーミある方は、時期などご自身でお調べくだされ。(沼田)