壁新聞

【『まちポレ壁新聞 -電子版-』更新しました。】Vol.18

◆未発表シリーズも今回が最終回です。<あなたの知らない映画業界>について2年前にしたためたものです。
 冒頭にある<前回>というのは、いわきアリオスのブログ『紙ヒコーキ新聞 2021年6月10日号<至福の柱>を指します。興味のある方は、そちらをご覧くださいませ。

業界用語の世界

前回、映画館の柱について書いたら、回りの反応が予想以上でした。それだけ昔の映画館に柱はつきもので、それにまつわる思い出も様々ということなのでしょうね。その中に、柱はスピードポスターを貼るのにちょうどいいスペースというのがありました。

この「スピードポスター」という物・言葉、それ自体が一般的なのかどうか不明ですが、サイズはB2版を縦半分にしたものです。大体タイトルと主演者がデカデカと書かれただけというパターンが多く、予告でいえば「特報」に値するようなものですね。これは想像ですが、映画全盛期の大量生産時代は宣材製作が間に合わず、速報的に作っていたからではないかと。サイズが小さければ当然版代も安く上がるし、昔は2本立てだったから2枚並べて1枚分ということもあったのかもしれません。
YouTube動画などで見る昭和時代の予告編でも、「撮影快調!」「乞う御期待」といった文字が躍っていたの同じだと思います。また柱だけではなく、屋外の電柱に張るのにもちょうど良かったからかもしれません(違法ですが笑)。

それとは別に私が思い出すスピードポスターは、「ヘラルド・クラシックス」という呼称で上映された、一連の旧作のリバイバル特集上映のものです。
「昼下がりの情事」「ティファニーで朝食を」などのヘップバーン作品、「イージー・ライダー」「おもいでの夏」といったアメリカンニューシネマ、「オズの魔法使い」「雨に唄えば」「誰が為に鐘は鳴る」といった文字通りの古典などなど。
こういった名作群を週替わりで連続上映してくれたわけです。この特集は、いち映画ファンとしてありがたかったですね。数週にわたるから、劇場側もお得な回数券を発行してくれたし。
これらがスピードポスターだったのは、前述したような掲示スペースと版代、そしてマーケット、加えて、版権の関係で使える写真が限定されていたという問題もあったのかもしれません(場面写真がワンカットありました)。
ディスプレイの面から言えば、スピードポスターは「ハス」に張ると様になりました。連張りだと尚更です。

ただ、検索して出でくるスピードポスターというのは、どうもB2版を上下に組み合わせたもののようなのです。
これ、私は「タテ看」と教わりました。「看板」ではないのだから、俗称なのは明らかです。これも想像ですが、「縦」と「立て」を掛け合わせただけだと思います。

2本立て時代だったので通常は上下に2作品張ります。そこに2枚組ポスターだと当然タイトルも写真も大きいので目立ちます。大作感も出ますよね。だから作品数は限られていたと思います。
映画全盛期のことは知りませんが、私が記憶しているのは「犬神家の一族」、
「人間革命」、新録音でのリバイバルとなった「七人の侍」などです。ちなみにこれらはコレクションしております。<百和映画>でも見たような気もするけど、ちょっと曖昧です。
私がタテ看を最後に見たのは、「極道の妻たち」シリーズのどれかですね。志麻姐さんだったか、かたせ梨乃さんだったか、どっちだったろ?

これが廃れたのは単純にコスト面、そしてシネコンになって主流がB2からB全(B1)サイズに変わったこと、街なかのポスター看板自体がなくなりつつあることでしょうね。要するに、需要と供給のバランスが一致しなくなったのです。

ついでながら、ポスターの話。
ン十年も前に仕事でオリジナルポスターを作るべく、友人の勤務する印刷所にB2版の天地半分にしたもの、つまりB3版ですが、縦長ではなく横柄なので「中吊りサイズで」と言ったら通じなかったのです。これは意外でした。テレビ番組では「中吊り大賞」という人気コーナーまであるのに。おそらくそれは、バスや電車の広告以外での横柄が少なかったから、受注自体がなかったせいかも?と思いました。                

ところで、「ヘラルド・クラシックス」のフィルムはニュープリントではなく、ズタボロ状態のもありました。特にヘップバーン作品は状態が悪く、「ローマの休日」に至っては、上映中に何度切れたことか。復帰のリスタートも焦るけど、終了後の再編集も悩みの種でした。ひとコマたりとも切りたくはありませんが、パーフォレーション(フィルム両脇の穴)の状態によってはカットせざるを得ない時もあり(切れるだけではく、コマずれする可能性がある)、心苦しかったですね。切ったらそのコマは無くなり、もう見られなくなってしまうわけですから。

(付記)
B全サイズの縦半分のスピードポスターも、作品によってはもちろんありました。                      (2021/6/10)

(追記)
「昼下がりの情事」は、「ヘラルド・クラシックス」の1本として上映されましたが、ポスターはB2サイズでした。 
 本文を「麗しのサブリナ」に修正します。       (6/17/沼田)