壁新聞

【『まちポレ壁新聞 -電子版-』更新しました。】Vol.91

◆最新163号では、現在上映中の「アメリカッチ」と「脱走」に触れたので、今回はそれを取りあげます。普段、タイムリー性というものは意識していませんが、この2作品を少しでも多くの方に見ていただきたいという思いからです。

今回のようなケースは稀で、アーカイブで再掲するは初期の50号までが圧倒的に多くて、4割以上を占めています。

 

◆『まちポレ壁新聞』最新163号『鉄格子の彼方』(7/18発行)は、5階ロビーに掲示中です。

※141号以降のバックナンバーのファイルもあります。

まちポレ壁新聞 №163 2025年7月18日

鉄格子の彼方

駅前純情シネマ その57

文通という言葉は今では死語だと思いますが、私には35年ぐらい文字だけでやり取りしている友人がいます。実際に会ったのは一度、それも数分だけなのですが(電話も稀)、手紙・メール・ラインと媒体を変えながら、付かず離れずいまだにやり取りが続いています。若い人のラインは短文が主でしょうが、私達のは「巻物」のようで、長いスクロールの応酬です。生活サイクルが真逆の為、おたがいの起き掛けにエンドレス状態の長文が届き、とりあえず目を通して、時間を改めて再読・返信というパターンです。

「アメリカッチ」を見ながら思い出したのはその友人のことです。かつては熱心な映画ファンで、この類の映画は必ず見て、長文をしたためてくれました。そういったことをラインすると興味を持ってくれ、映画の内容についてさらに詳しく書き連ねました。おそらく友人の住んでいる地域では見られそうもない映画なので。

 

この作品には「コウノトリと幸せな食卓」という副題がついています。メインタイトルだけでは何のことか分からないから付けたのでしょうが、子宝をもたらすコウノトリ(舞台となるアルメニアでも同様に解釈されているようです)と収容所、幸せな食卓というのがまず結び付かない。ポスターを見てもイメージが湧きません。ただ、それこそがこの映画の魅力なのです。意外なストーリーの連続、しかし、少しも奇をてらったところはない。

 

ファーストシーンは、鍵穴から始まります。以降、鉄格子にしてもアパートにしても、最後の〇〇にしても、「窓」と「覗き」が物語を動かしていきます。収容所が舞台なのに悲惨さはなく、むしろサイレント映画のようなコメディタッチで展開されます。見終えると、有刺鉄線と拡声器、つがいと思われるコウノトリ、巣(家)の上に背を向けて立つスーツ姿の紳士、遥か向こうにそびえたつ雪の山並み…、それらがあしらわれたポスターのすべてが示唆に富んでいることが分かります。

 

主演のマイケル・グールジャンという方は、他に監督・脚本・編集も手掛け、かつ収容所を舞台にして子供も絡んでいることから、「ライフ・イズ・ビューティフル」を引き合いに出した評も見受けられます。確かに、ロベルト・ベニーニに通じるものを感じさせます。

私が見た日には結構お客様がいて、この秀作を見つけてくれた人が多かったことを嬉しく感じました。本音を言えば、もっと内容に切り込んだことも書きたいのですが、まだ上映中ゆえギリギリの線に留めました。

いつもの長いあとがき

その日は一度帰宅し、夕方から「脱走」を見るため再び劇場へ。

一転、こちらはタイトルズバリの脱北物で、冒頭からいきなりその場面から始まります…かと思いきやそれは下見であり、こちらもいい意味でストーリー展開が裏切られました。

 

本筋には無関係なのですが、ラストに付く特典映像は、てっきり来日舞台挨拶の抜粋と踏んでいました。ところが、日本のファンに向けた後撮りの<サービスインタビュー>だったのです。それはまるでアイドル映画のようで、私が期待していたものからはかけ離れていました。確かに映画は見られてなんぼの世界だから宣伝は大事だし、私自身興行側にいる人間ではありますが…。

 

ところで、「脱走」でツインのタイトルロゴとその効果音が流れただけで目頭が熱くなってしまうのは、インド映画ファンの哀しい性でしょうか(笑)。

一回お休みした『インド印映画まつり』を、8月22日から2シーズンぶりに開催いたします。メインはカンヌでグランプリを獲った「私たちが光と想うすべて」ですが、「RRR」が何度目かの再登場。小名浜と合わせると5回め?  これは、「RRR ビハインド&ビヨンド」が<あまりにも突然>すぎて春に間に合わず祭りの実施を諦めたためで、それならと<逆算>して「RRR」の登板となりました。だったらこの際と、もちろんマサラも開催いたします。

懸念事項は、紙吹雪の片付けをどのタイミングでするかということです。「ビハインド&ビヨンド」を続けて上映するのでその終了後と考えていましたが、「ビハインド&ビヨンド」だけ見る人がどう感じるか? でも、こっちでも撒きたいというツワモノもおりまして(笑)。

インドと言えばの恒例トーク。それは、まだヒミツです。

そうそう、毎回したためている書は『創造神を浴びよ』に決めました。これは単に今回だけに留まりません。まもなく版権の切れる<あの映画>の予告でもあります。そう、アレです! さらにインド本国では、「バーフバリ」10周年の特別企画もあるやなしやという噂も飛び交って…。

 

「RRR」旋風は宝塚をも巻き込みましたが、なんとなんと「侍タイムスリッパー」も宝塚で舞台化というニュースが飛び込んできました。地上波テレビ放送で一段落かと思っていた矢先だったので、まさに驚天動地です。「侍タイ」に火をつけたのはインド沼の民とまことしやかに伝えられていますが、とどまるところを知らないその後の展開まで「RRR」と似てきたじゃないか! この「侍タイ」の物語にはさらなる続きがあるのか⁉          (沼田)