壁新聞

【『まちポレ壁新聞 -電子版-』更新しました。】Vol.21

◆小名浜の有人カウンターに立つと、3ケタのポイントを貯めている方がたくさんいらっしゃるのに驚きます。一応「ポイントはお使いになりますか?」とは聞くのですが、ほとんどの方がお使いにならず貯まる一方です。「そのうち(使う前に)死んじまうよ」「いえ、その前にウチがなくなっちゃいますよ」などとブラックジョークの応酬をしたりして、会話を楽しんでいます。あなたは、お好きな席がありますか?

まちポレ壁新聞 №77    2022年6月17日

私の指定席

Time My-Scene ~時には昔の話を~ (vol.42)

二年振りにまちポレに戻ってきて、以前よりも増えたと感じる質問に「自由席ですか?」というのがあります。シネコンでの鑑賞が当然になった今、全席自由が珍しいのは事実です。ただ、以前紹介したシネマスコーレ名古屋でさえ「この後の上映、全て<貸切>でご覧頂けます」というのも珍しくないことを思えば、入場後にどこでも選べる<実質座席指定>と言えなくもないです(泣)。

小名浜の有人カウンターや自動発券機前に立つと、「どこが見やすいですか?」という質問もかなり受けます。
見やすさは千差万別なので答えに窮しつつ、「〇列め以降なら見づらくはないので、あとは見上げるのが好きか、後方でゆったり見るか、お好み次第です」とお答えしています。

人それぞれ、やはりベストポジションというのはありますよね。前に人の頭があるのを嫌う人、同じく前方が好きでも視力のためだったり、ハスに見るのが好きだったり、ド真ん中、あるいは最後列が好きなど、まさに十人十色。
まちポレのスクリーン①だと、最前列の畳席や最後列のソファーなどまずは自分なりの指定席を陣取ってから、トイレに行くなりチラシをチェックするなりというご常連さんも多くいます。もちろん、私のように座れりゃどこでもいいという方も(笑)。これって、立ち見を経験してるから?
それで思い出したけど、最初にアルバイトした映画館でのことですが、整理にてんやわんやの混雑の時、あるベテランスタッフが思わず「立ち見は座れます」(笑)と言ってしまったのが忘れられません。それぐらいパニクってしまうほど混んでいたということですね。ま、こじつけ的に言えば「立見席」という言葉だってあるから、分からないでもないか?

もう一人忘れられないのは、スコープかビスタかスクリーンサイズを確認してから座席を決めていた学生アルバイトです。「不滅の恋/ベートーヴェン」を見て、「市民ケーン」だったんですねという感想を述べるなど映画を見る目を持った学生でした。確かに横長のスコープだったら、いつもよりは後ろ加減に場所取りするでしょうから。

お正月には混雑している映画館が当たり前だった時代、1作目の「ちびまる子ちゃん」のとき、「お子さんだと画面が見えないぐらい立ち見も混んでますよ」と親御さんに説明したのに、それを物ともせず、四つん這いになって立ち見の足下をスラスラスラーっと這いつくばって進んで前方に座った、それこそまるちゃんのような女の子がいたのが忘れられません(笑)。

いつもの長いあとがき

今はスタジアム形式のシネコンが主流のため、構造上、出入り口が前方にあるというのがほとんどです。
そこで悩むのは、(注/場内チェック時の)劇場スタッフの位置取りです。
画像や室温のチェックだけでなく、観客席の様子にも注意しなければならず、必然野球のキャッチャーのようにお客様と正対することとなります。これは注意を要します。
私自身、片手に満たない観客と「野球少女」を他館で見たときなど、頻繁にチェックに入るスタッフの姿が煩わしく感じて仕方ありませんでした。向こう(換言すれば、私たちスタッフ)はそれが仕事とはいえ、観客からすれば視界に<異物>が入ってくるわけで、集中が削がれます。
ただ、実際に盗撮という深刻な問題もあるし、適温を保つには入り口通路付近だと体感温度が分からないので、痛しかゆしの問題でもあります。

シネコン以前は、<一部座席指定>というのもありました。コンサートなどのS席A席のようにランクがあり、大体は中央エリアや2階席が指定席で割増料金になるというのがほとんどでした。あくまでも「相対的に」見やすいとされる席であって、前述したように<好み>の問題ですからね。加えて、平日初回は全席自由にしてましたから、要するに混雑時の増収が実情だったのでしょう。あるいは、デートの時の見え張り用か(笑)。

座席指定制の、時間通りに行っても楽々座れるというのはメリットに違いありませんが、「席取り合戦」のスリルは味わえなくなりました(笑)。前後左右にどんな方が座るかという逆の意味でのスリルもあるかもしれませんが? 仕事上、自館では混んでるときには見ていないので、自由席時代の「場所替え」が懐かしく感じられる今日この頃です(笑)。
昔、アクション映画を再見する場合、迫力重視の前方を取るか、物語など全体像を見るのに後方かなどと変えたりした経験、中年以上の方ならあるのでは? もちろんこれは今でも可能ですが、昔はソレが上映中でも出来ましたから(笑)。

便利になると失われるものが出てくるのは何も映画に限ったことではないので、やむなしではあります。

そういえば、アイドルのドキュメンタリー映画を上映した際、たまたま「結果的」貸切上映の回があり、それを見ていたのが旧知の方だったので、「貸切で寂しくなかった?」と聞いたら、「思いっきり<応援>出来てサイコーでした」という返事。映画はみんなで泣いたり笑ったり共有するのが楽しみと思っている私からすると、理解不能(笑)。ファン心理とは摩訶不思議なものです。  (沼田)