壁新聞

【『まちポレ壁新聞 -電子版-』更新しました。】Vol.27

◆コロナにより一時中断していましたが、毎年7月になると市内の中学生が体験学習に訪れます。今年も男子生徒が二名来ましたが、一番生き生きと目を輝かせていたのは、映写室を案内したときでした。普段は関係者しか入れないところですからね。今回は、それに絡んだ話題をマクラにして綴った2年前の62号をご紹介します。見出しはスタンダールもジェラール・フィリップも全く関係なく、最後まで目を通していただければ分かる、かな?

◆『まちポレ壁新聞』最新117号『惹きつける力』は、5階ロビーに掲示中です。
 ※101号以降のバックナンバーのファイルもあります。

まちポレ壁新聞 №62 2021年11月12日

黒と赤

Time My-Scene ~時には昔の話を~ (vol.27)

 先月下旬の二日間、中学生数名が体験学習で来社しました。
 恒例、最後のご質問コーナーでは、「この仕事をしていて嬉しいことは何ですか?」という問いかけが必ずあります。この時もです。
 これに対する私の答えはいつも決まっています。「お客様から、いい映画だった、面白かった、ありがとう、そう言われるとき」というのが回答です。
 別に自分が製作にかかわったわけでも何でもなく、ただ場を提供したに過ぎず、しかも料金までいただいているのに、お礼まで言われるとは。映画を愛する末端にいる者として至上の喜びだからです。

 この体験学習がきっかけで映画の世界に飛び込もうと決めましたという生徒がいるかどうかは別にして、滅多に入ることのできない映写室まで入れたのは貴重な経験となったかも。深々と「ありがとうございました」とお辞儀をして帰った生徒たちでした。

 お礼と言えば、百回以上行った巡業(映画教室)で、一度だけ上映後に全児童から「ありがとうございました」と挨拶されたことがあります。
 先生の号令で児童が回れ右して、「今日の映画を映してくれた〇〇さんと、そのお手伝いをしてくれた沼田さん(その時はアシスタントでした笑)です。みんなでお礼を言いましょう!」「ありがとうございましたーっ」 
 その時のベテラン映写技師さんのテレ気味の笑顔が忘れられません。

 映画教室では、他にも児童・生徒たちが首だけ振り返る時があります。フィルムのロールチェンジの時です。「どうやって切り替えてるの?」「何でタイミングが分かるの?」てな感じですかね? 悦に入りながらも(笑)、オイオイ映画は続いてるんだよ、画面見てよと思う私です。
 16ミリの場合はあらかじめ1リールに編集して上映するのが通常でしょうが、私がいた会社は劇場用の35ミリフィルムでの上映だったので、1巻が大体20分ぐらい、巻と巻の切り替えが必要なため、2台での映写でした。

 今更フィルム映写時代の話をしても化石について語るみたいでしょうが、リール式での映写の場合(1台映写のターンテーブル式は略します)はどうしても終映後の巻き戻しが生じるため、必然的に2台の映写機が必要になります。カセットやビデオテープをイメージしていただくと分かりやすいでしょうか。そのためにフィルムを前後半2つに分けるのですが(2本立てなら不要)、その切り替えのタイミングには「ポイント」と呼ばれるチェンジマークが、数コマずつ2箇所あります。最初のポイントで次の映写機がスタートして、そのあとのポイントで切り替わるという仕組みです。これをトリックに使った海外の刑事ドラマがあるのは有名なハナシですが、私は未見なので詳細は分かりません。
 ところが、プリントが痛んでくるとその部分が欠落していることもあります。特に巻のエンド部分は引っ張りが強くて傷みやすいのです。そんな時でもベテラン職人は慌てません。事前にチェックし、何と火の点いた線香を使ってフィルムの数コマに穴をあけるのです。私は間近で見たことがあります。大したもんです。

いつもの長いあとがき

 重箱の隅をつつくような話になってしまいますが、前出のことからすれば、あの「ニュー・シネマ・パラダイス」には<嘘>がありますよね。まぁそれには目をつぶることにしましょう。アルフレード同様にね。

 私の回りで、「パリ,テキサス」がこの業界に入るきっかけになったという方を知ってます。私はこの映画、見に行ったら冒頭の20分で睡魔に襲われ出直すことにしたのですが、「あとで」は巡ってこず、残りの約2時間は未見のままです。入場前に買ったパンフレットはありますが(笑)。これも「ウエスト・サイド物語」同様、私の黒歴史(笑)。

 ところでこの映画、某女子高で上映したことがあります。私はフィルムを運んだだけで立ち会っていないけど、どんな反応だったんでしょう? 気になる。

 自説ですが、『映画のイントロ20分説』というのが私の持論です。フィルムでもちょうど1巻分。このあたりから物語が動き出し、<起>から<承>へと繋がるのです。乗らない映画の場合、私はこの辺で眠気を催すことも。上映スケジュールがタイトな海外の映画祭などの場合も、もしかしたらここで見切りをつけてしまうマスコミや業界人がいるかもしれませんね。

 私の黒歴史の「ウエスト・サイド物語」と「サウンド・オブ・ミュージック」を、妻は中学の音楽の授業で見たそうです。「曲の部分だけ?」と聞いたら、「全部」だって。授業にも身が入りそう(笑)
 また、英語の授業では「シュワちゃんのも見た」というので、てっきり「ターミネーター」かと思いきや、「トータル・リコール」だって(笑)。
 「そんなのやって(冒頭のシーンを指す)大丈夫なの?」と聞いたら、案の定騒いだそう。そりゃ当然だ。私も、9割ぐらいが男子という高校でやったことがあるけど、大変な騒ぎだったもの(笑)。予餞会だったからまだいいけど。
 私が小中学の時、映画教室で見たので鮮明なのは、<如何にも>の「片足のエース」と、多分という条件付きなのですが「赤毛」です。三船敏郎さんと思しき武士の真っ赤な髪の毛が風になびいていたのだけ記憶しています。  (沼田)