壁新聞

【『まちポレ壁新聞 -電子版-』更新しました。】Vol.32

◆芸術の秋。5階ロビーには当館以外の様々なイベントチラシを置いています。仙台短編映画祭はこの連休に終了しましたが、湯本ではアーユルヴェーダ博覧会が開催中、週末には水戸で「トップガン/マーヴェリック」の野外上映会が開催されます。そこで今回は、およそ2年前に水戸野外上映会に触れたものを再録。文中にある<新>市民会館は7月に竣工し、オープンしました。こちらも早く見学に行きたいな。

 

◆『まちポレ壁新聞』最新119号『ほとばしる熱量』は、5階ロビーに掲示中です。

※101号以降のバックナンバーのファイルもあります。

 

まちポレ壁新聞 №63 2021年11月16日

やがて実になる

Time My-Scene ~時には昔の話を~ (vol.28)

 

私も拙文を寄せたことのある「日々の新聞」が、10/31発行の第448号で『種まく人たち』と題して、亡くなった佐川一信さんの特集をしています。元水戸市長だった方です。

行政の中で文化に重きを置き、市の年間予算の1%をそれに充てるという大胆な施策を実現し、在任中に水戸芸術館を建てました。美術ギャラリー、コンサートホール、劇場の3つからなる施設で、手垢のついた表現になりますが、まさに<芸術文化の殿堂>と言えるものです。

9月にはその芸術館広場で恒例野外上映会が行われ、私も陣中見舞いがてら駆け付けました。上映作品は「風の谷のナウシカ」(1984年)。風になびくスクリーンは野外ならではの風情です。折から芸術館自体は、まん延防止措置期間中とあって休館中。しかし、二階屋上部分には日比野克彦さんのアート作品が屋外展示中で、中庭では野外上映という、この場所にふさわしい異空間が出現していました。

翌10月には、この地へ2年振りに水戸映画祭が帰ってきました。

これには伺えませんでしたが、そのとき35ミリフィルムの映写をしたのが友人Iくんです。

ここにはかつて、Iくんが通っていた小学校がありました。

上映会場となったACM劇場の辺りにちょうど講堂があり、映画教室で映画を何度も見たそうで、数十年経って今度は自分が映写する側に回ろうとは、と感慨深げに語っていました。

今、道路を挟んだ反対側の京成デパート跡地には新しい市民会館が建設中です。<箱>だけでなく、佐川さんの志を継いだ文化都市水戸にふさわしい施設となるといいですね。

 

いつも以上に長いあとがき

つい最近、「ノッティングヒルの恋人」(1999年)をBGM代わりに掛け、チラ見しながらパソコンを打っていたら、思いがけず編集ミスに気付いてしまいました。

ジュリア・ロバーツ扮するアナがヒュー・グラントにキスするいい場面で、カットが変わるたびに彼のシャツの染みが変わっているのです。

別にアラを指摘しようとしているわけではなく、これってビデオの功罪のひとつではないかと思ったのです。劇場で見たときには全く気付かなかったもの。ビデオだとどこか傍観者的なところがあり、ましてやながら見で集中していない分、逆にそういう枝葉末節的なところが引っかかるんじゃないのかなぁ。

これで思い出したのが、「アメリカン・グラフィティ」(1973年)を2度めに劇場で見たときのこと。カーレースの場面で、ナンバープレートが「THX-138」と分かったときの快哉を叫びたくなった自己満足の陶酔とは真逆です。昔は何度も劇場で見直して、そういうのを<発見>してたもの。

一応書き添えると、ジョージ・ルーカス監督のデビュー作が「THX-1138」(1971年)という作品で、私は「ぴあフィルム・フェスティバル」で見ました。その年はマーティン・スコセッシ監督やジョン・ランディス監督などのデビュー作や学生時代の作品が一緒に取りあげられていました。

映画の本質に迫ろうとするなら、もしかしたらビデオの方が一歩下がって俯瞰的に見ている分、理解できるような気もします。でも、我々は<観客>としてお金を払って見ているわけです。のめり込んで楽しんでいる以上、「ニュー・シネマ・パラダイス」の<嘘>ようなご都合主義に目くじら立てるのはやめましょうよ。

「ノッティングヒルの恋人」のことを妻に話したら、『そんなの韓流ドラマではしょっちゅうだよ』というおおらかな<大人の答え>が返ってきましたよ(笑)。

そう言えば「種まく旅人~みのりの茶~」(2012年)という作品を、田中麗奈ちゃん主演に魅かれて大分前に見ました。

お茶の有機栽培を祖父から引き継いだ孫娘(麗奈ちゃん)が悪戦苦闘するところへ現れた謎の人物(陣内孝則さん)。その正体は…という遠山の金さんものなのですが(役名も金次郎笑)、どうも私は陣内さんの演技が苦手でして(笑)。言いたいことが分からぬではないが…という出来でした。しかし、世間的には好評だったようで、その後何本かシリーズ化されたようです。

一つ言いたいのは、農作物でもあるいは文化や人でも、ただ種を播いただけでは育たないということ。大切なのはそのあとに手間と時間をかけること、つまり<追肥>です。

佐川さんが播いた種は芸術館以外でも、寄贈した本やCDが佐川文庫という図書館として残り、今は実姉の千鶴さんが継承しているそうです。私の同級生は、娘さんがこここで勉強したりクラシックのCDを聴いたり、随分とお世話になったと言ってましたっけ。

水戸映画祭も佐川さん在任時に予算化され、スタートしたものです。後発の水戸短編映像祭は今休止中のようですが、ここからは、今泉力哉、中野量太、沖田修一、冨永昌敬(敬称略)といったそうそうたる新しい才能が何人も巣立っています。播いた種が芽を出し実となっている証しでしょう。    (沼田)