壁新聞

【『まちポレ壁新聞 -電子版-』更新しました。】Vol.86

◆前回の電子版85号から遡ること約半年。42号では、小椋佳さんを切り口にして、後半では月刊シナリオがらみで、『Time My-Scene』のコーナータイトルにふさわしい古い作品が続々と登場し、最後の締めは「みゆき」と「さらば映画の友よ」へとワープするという構成でした。

 

◆『まちポレ壁新聞』最新159号『映画を追いかけて』(5/20発行)は、5階ロビーに掲示中です。

※131号以降のバックナンバーのファイルもあります。

 

 

まちポレ壁新聞 №42  2021年6月10日

まあだだよ

Time My-Scene ~時には昔の話を~ (vol.7)

 

「もういいかい小椋佳ファイナル~歌創り50年 青春に帰る~」と題したライブ・ドキュメントが5月29日に、NHK-BSで放送されました。オンエアー前夜に偶然知った私は録画して、翌日に鑑賞。予備知識が全くなかった分、逆に堪能出来ました。

 

今年喜寿を迎え、歌手を引退する決意を固めた小椋さんの50年にわたる音楽活動を90分間に凝縮したもので、いつ取材していたのか、二足の草鞋を履いていた第一勧銀時代の銀行内の映像や病気の家族のことなど古い映像を交え、更に中村雅俊さん、五木ひろしさんなどへのインタビュー、そしてレコーディング風景や創作工程に迫り、多年にわたる丹念な取材の跡が窺えます。

 

オープニングはやはり、<初顔出し>となった1976年のコンサート風景からでした。視聴率が30%を超えたという視聴者のひとりとして、当時私もテレビの前にかじりついて見ていました。アルバムも初期のものを数枚所持していますが、それでも初めて知ることのオンパレードでした。

 

とにかく、関わりのある人物が凄いのです。

1970年の「初恋地獄篇」の音楽を担当したのは知っていましたが、寺山修司さんとの交流エピソードは初めて知り、そこから、のちにキティ・ミュージック創始者となる多賀英典氏を介し、井上陽水さんと「白い一日」の共作が誕生したことが解明。今や劇団四季の看板スターとなった山崎育三郎さんは、小椋さんが立ち上げた児童ミュージカル出身ということも初めて知りました。更に、「北の桜守」、現在上映中の「いのちの停車場」と続いた吉永小百合さん主演作は、依頼は主題歌だったけれど、小椋さんとしては吉永さんを<讃える歌>として書いたということも。

他には、ナターシャ・グジーさんというウクライナ出身の歌手も、彼女の演奏するパンドゥーラという楽器も初めて。彼女の「天は二物を与えた」としか言いようのない美貌と澄み渡る歌声!  加えて、日本語の美しさ。ジブリ作品や「防人の唄」「翼をください」などもカバーしているようですが、死ぬまでに山本潤子さんのコンサートに行きたいという私の夢に、もう一人この方も加えなくてはなりません。

林部智史さんといういう歌手も初めて(←この稿5回目の「初めて」)知ることとなりました。

そうそう、作詞=小椋佳、作曲=エリック・カルメンというスーパーが表示された曲がありビックリしたのですが、エリック・カルメンの「雄々しき翼」というアルバムタイトルにもなった曲に、小椋さんが日本語の詞を付けたものでした。小椋さんの声量はだいぶ落ちてしまいましたが、原曲は美しいバラードです。

 

最初のクレジットを見逃してしまったためナレーション担当が分からなかったのですが、意外にも土屋太鳳ちゃんでした。凄く自然で耳あたりが良く、適切な人選だったと思います。

録画予約した時点では「とりあえず録っとくか」程度でしたが、貴重な映像証言となっており、保存版のストックがまたひとつ増えました。

 

いつもの長いあとがき

 

前ページに記した多賀英典さんは、映画史に足跡を残した人物です。

キティ・ミュージック創設の数年後、今度は映画界に進出し、キティフィルムを設立しました。

実質的なデビュー作は村上龍原作「限りなく透明に近いブルー」だったと思うのですが(未確認です)、同じ原作者による続く「だいじょうぶマイ・フレンド」ともども、質的にも興行的にも惨敗といっていい結果に。私は前者を見ましたが、ほとんど記憶が甦りません…。

ただその後は、長谷川和彦監督の「太陽を盗んだ男」、「跳んだカップル」「セーラー服と機関銃」「ションベン・ライダー」といった一連の相米慎二監督作品、松田優作さんの監督デビュー作「ア・ホーマンス」など、重要な作品が多々あります。これらはいずれ触れる機会もあると思うので、今回は、「みゆき」と「さらば映画の友よ インディアン・サマー」の2本を取りあげます。

 

前者には、同じ映画館でアルバイトをしていた同い年の女性(高星由美子さん)が脚本で参加しています。大学在籍中に応募したシナリオが「新人映画シナリオコンクール」に入選し、ドラマ化。応募時のタイトルは「野球狂の詩を歌う娘」でしたが、ドラマ化に際して「俺たち夏希と甲子園」と改題されました。入選作は雑誌「シナリオ」に掲載されたので、私も読みました。映画はこの「みゆき」が初めて(だったような?)。あの(と形容していいでしょ)あだち充さん原作の映画化ですよ!  大抜擢ですよね。

ニール・サイモンに憧れ、「グッバイガール」が大好きだと言っていた高星さん。嗜好が同じ三谷幸喜さんの「古畑任三郎」の感想、聞けたらいいな。

尚、入選作掲載誌には「泥の河」(ついでに言うと笑「なんとなく、クリスタル」もです)も収録されているという、超レアものです。私もその号は収納せず、本棚に有ります。それに「俺たち夏希と甲子園」はDVD化されているので、見るチャンスがあるかも。

後者は、今や大監督となった原田真人さんが、映画ジャーナリストから映画監督となった記念すべきデビュー作。決して成功作とはいいがたいのですが、川谷拓三さん扮する映画狂の主人公は好感が持てます。      (沼田)